人と人の出会いなんて中途半端なものだ。そんなもの運命とか偶然とか、所詮その程度のもので片付けられる。だけど、この世界に『もしも』なんてものが存在して。もし、あの日あの場所で出会わなければ。もしかしたら知り合わなかったかもしれない。一生他人のままかもしれない
なんて、そんなロマンチックなものを俺は掲げるつもりはない。そんなバカバカしいようなロマンチストになるつもりはない。
だから、この世界に『もしも』なんて存在しない。それが原因・・・それが偶然を呼んだ原因。あの日あの場所で俺は見た。出会いと呼べるかもしれないものを・・・
あの日あの場所であの偶然が起きなければ絶対に出会わなかっただろう。そう・・・絶対に・・・。偶然とか運命とか、そんなものも信じなかっただろう。
だけど、結局それが始まり。ちいさい・・・とてもちいさな始まり。それが俺のこの先の 物語となるのかも怪しいほどの始まりだ。
それは単なる気まぐれだった。その夜、何の前触れもなく散歩にでた。特に理由もなく特に行き先もない。そんな知性のカケラもない。ただどこかに行きたかった。
月明かりのない暗い夜道。さまよい歩いた先は何の所縁もない墓地。電燈の明かりが遥か遠くでぽつんと一部を照らす以外は真っ暗な闇の中。その寒気のするようなこの空間の真ん中にただ漠然と立ち尽くす。
そして、その時偶然が・・・まさに運命のような偶然が起きた。
墓地を眺めていると、ふとある『もの』が目に入った。それは気のせいとも思えるほどとても薄い存在感。そこで俺がそのまま見過ごせばそれまでだっただろう。しかし、俺はそれを確かめた。振り返った。そして見た・・・。そこにある『もの』・・・いや、そこに居た『者』を・・・。
それは一人の少女だった。とても不思議な少女だった。そこに居るのにまるで居ないかのような・・・今にも霞んで消えてしまいそうな少女。それが周囲とあまりにも不釣り合いでとけこんだ存在。その時何か思った。だから俺は彼女に歩み寄った。彼女に声を掛けた。そこに理由などみじんもなかった。そう、なに一つとして・・・
そうして、偶然の中で俺は彼女と出会った。そしてそれが始まり。ちいさな・・・ちいさな始まり。
これから始まる物語の・・・
プロローグ