僕の世界から色がなくなったのは何時ぐらいからだろう?
でも気が付いた。生きていることがつまらないって思っている自分も色あせた世界も変えてしまえそうな瞬間はいつもすぐ傍にあったんだ……
COLORS
いつも決められた時間に起きて、聞きたくも無い親の小言を聞きながら朝食を食べ、いつもの様にバスに乗り電車に乗り学校へ向かう。
正直学校なんか面白くもないし行きたくも無い。僕が教室に入ると瞬間的に空気が固まる。そして何も無かったかのように教室は動きだす。自分の机に向かう。そこには素晴らしいまでの『死ね』『キモイ』『殺』などの文字が芸術的に彫られている。誰にも気づかれないようにため息を吐き、何も気にせず悠々と流れる雲を眺めていた。
この教室に居たいわけじゃないできることなら学校なんか来たくはない。でも僕の親はそれを許さない。『世間体が〜』や『周りの視線が〜』などと言っていて僕のことなんてこれっぽっちも考えていない。まぁ最初から期待はしていないからどうでもいい。
教室に教師が入ってきた別に興味も無い僕の惨状を教師達は黙認しているし僕も面倒なので何も言わない。教師が取る出席に適当に返事をした。
一限目の授業を適当に聞き流し、授業が終わると共に僕は教室を後にした。
当ても無く教室に、いや学校という所に居場所が無い。だから僕は唯一学校の人が誰も来ない場所『屋上』に行く。
誰も居ない屋上に一人寝転び空を見上げる。白黒の色の無い世界で雲が空を流れていく。
別に僕には障害があるわけではない。空は多分青く、雲は多分白く見えているんだろう。
でも僕には白黒TVみたいな映像にしか見えない。
いつからこんな風になったのかなんて覚えていない。気が付いたらこんな状態で元通りにする気力もわかなかった。
そうついこの時まではそう思っていた。
突然屋上の扉が開いた。

そこに居たのは一人の同じ歳くらいの少女。
「キミさ。よくここに居るよね?キミと話してみたかったんだ。」
その言葉が空っぽだった僕の心(へや)に光のように射し込んできた。
色のない世界が彼女の周りから徐々に色を取り戻していく。
彼女の方から目線をはずし大空を見上げると白黒に見えていた空が青く澄み切っていく。
僕は何でこんなことを思ったのかは判らない。
でも閉ざしていた心(まど)を彼女に向かって開いてみたい。そんな事を思った。
「ねぇ?少し話さない?」
僕は無意識に頷いた。
時間がたつのも忘れて僕達は話し込んでいた。
僕のこと、彼女のこと、好きな音楽の事、好きな本のこと。
いろんなことを話した。このとき彼女に『なんで僕がここに居ることを知っていたのか?』を聞いてみたら。彼女の教室の彼女の席からいつも僕が定位置している場所が見えるそうだ。まぁ単純な理由だね。
彼女と話しているとき僕は久しぶりに笑った。
学校では当然。家でも笑わなくなった僕が久しぶりに笑った。
不思議だ。彼女と話していると僕はありのままの僕で彼女に接することが出来る。
僕は彼女が居なくなり一人残った屋上でそんな事を考えていた。




―次の日―


友達なんか居ない僕は一人学校へ続く道をひたすら登っていた。
そんな時後ろから声がした
「おはよう。」
朝陽が照らす中一人その声に振り向くと彼女が居た。
「お、おはよう」
少々どもりながらも彼女に挨拶を返す。
眩しい陽射しの中その挨拶に満足したのか彼女がふと微笑む。

ほらまただ……
閉ざしていた僕の心(まど)が開きそうになる。
また僕の世界に色が戻ってくる。
あぁそうか彼女は僕や僕の視界(せかい)を変えてしまえるような存在なんだ。
彼女が微笑みながら僕に言う。
「一緒に行こう。」
彼女はそう言って手を伸ばす。
この手に触れていいものか僕は迷ったけど、彼女(ひかり)へと手を伸ばす。
彼女は僕の手を掴み走り出す。
そんな彼女に僕は笑いながら手を離さないように一緒に走った。


僕の心の中を空の色が吹き抜け風が希望の匂いを運んできた。


自分を世界さえも変えてしまえそうな
瞬間は何時もすぐそばに……
Fin
あとがき
お久しぶりのJTRです。
久しぶりに書いて見ました。今回は二次創作に入るんじゃないかな?
今回、私はFLOWの楽曲『COLORS』を元にこの小説を書き上げました。
登校途中この歌を聴いていたらパッとこの物語が頭に浮かび、あとはパソコンに向かいカタカタ。
構想半日。制作期間3日。うん。早いね。
今回の目標は『『COLORS』と言う歌の世界を壊さずに物語を書く』でやってみました。
もし気が向いたら実際にFLOWの『COLORS』を聞いてみてください。
その時、歌の世界観とこの物語が上手いことリンクしてくれたらなと思います。
もし次回作があるなら次回作でお会いしましょう(^^)