踏み切りを渡った先によくボクが天体観測をしている場所があるんだ。
そんな話をしたらキミは一緒に星を見たいと言ってその日のうちにボクと一緒に天体観測をする約束をしたんだ。
天体観測
―午前二時

キミと約束したその日ボクは約束の場所に向けて望遠鏡を担いで行った。
ベルトに結びつけたラジオからアナウンサーの人が
「夜は雨は降らないで満点の星空が見えるでしょう」
などと言っている。

踏み切りを渡り小高い丘を越えた所にある公園。木が街灯を遮り星を見るのに最適な場所だ。
ボクがここについて望遠鏡を組み立てているとキミが大げさな荷物をしょって来た。
その荷物に思わず苦笑いのボクを見てキミは笑わなくていいじゃないと頬膨らませむくれた。
そんなキミを諭す様にはじめようかと問いかけるとさっきまでのむくれてたのはどこへ言ったのかと言わんばかりの笑顔を浮かべた。

二人して望遠鏡を覗き込みながら星を眺めているときに周りを見渡して不安に駆られた。
真っ暗な夜の暗闇がまるでボクらを飲み込んでしまうのではないかと。

そんなボクの気持ちを知らないでキミは望遠鏡に映る星空にはしゃいでいた。
はしゃぐキミを見ていたら無意識に心臓が高鳴って。

ちょっとどぎまぎしているボクを不思議そうに見て笑いながら話すキミをみて幸せな気持ちになれたんだ。

一時間もしないうちに次第に雲行きは怪しくなっていき、ポツリポツリと振り出した雨は次第に強くなって、近くの木まで二人で走った。

予想外の雨にうたれて、夏も終わりに近づいたこの季節、夜になると意外と冷え込んで震えるキミ。こすり合わせている手を握り温めてあげようとも思ったけどボクにそんな勇気はなくて、そんな自分が嫌になった。

しばらくすると雨も上がり荷物をまとめ公園の入り口で別れた。
キミの背中を見送って望遠鏡を担ぎ自転車にまたがり静寂と暗闇が続く道を駆け抜けた。



その日からボクも大人になった。

あの日見えた自分の気持ちを見落として、学校を卒業して別々の道を歩むキミをふと思う。
ボクは元気だよ?心配事もなにもないよ?




でも、今も一つ後悔してるんだ。




急に雨が降ったあの時キミの手を握っていればこんな気持ちはなかったのかな?

もう一度キミに会えたらと望遠鏡をまた担いで午前二時踏み切りを越えたその先にあるあの公園まで自転車を漕いで行くよ。

さぁまた始めようか天体観測。たとえキミがここにこなくとも・・・・・・
あの日二人見た星空をボクはキミの幻影と二人今も追いかけている。


END

あとがき
短編書きました。
うん。久しぶりに書いた気がする。
書いてて楽しかったからいいかな?
また機会があったら書きます。