第壱話 作戦、開始
「キョウスケ、時間だ。」
放課後になり、昼休みからずっと惰眠を貪っていた俺の机にユウスケがそっとやって来た。
「ん?ああ、そうだな」
机に突っ伏してた顔を上げ、携帯を取り出し時刻を確認する。時刻は、16時を回っていた。

俺、時村キョウスケと霧島ユウスケは共にミステリー研究部に所属している。
が、唯一の部員であり、俺が部長、ユウのやつが副部長をしている。顧問はいない。
勝手に名乗っているだけだ。だが自称の割には校内でも知名度が高く、既に職員のブラックリストに登録されているという噂だ。近頃やけに監視の目が厳しくなってきたのはそのせいだろう。知名は知名でも、いわゆる「悪名」ってやつだ。定番の「夜中、グランドの真ん中でUFO来ぉ〜い作戦」は勿論、「独自に制作したアンケートを使って町内からエイリアンを探し出す作戦」や「NASAのコンピューターにハッキングをかけてエイリアンの研究資料をパクっちゃおう作戦」、「学校HPの掲示板に『超能力者この指と〜まれ☆〜問い合わせは下記まで』と書き込む作戦」等々、ありとあらゆる作戦を実行してきた。ちゃんとした「部」であることを証明するために、夏休みと冬休みの過去2回レポートを提出したのだが、評価の結果がまだ返ってきていない。忘れ去られている可能性が高いだろう。
そして今日は、かねてより計画していた「遺跡侵入」作戦を実行に移す日だ。

この学校の裏手にある山の中腹に、遺跡がある。
後でわかったことだが、町内でも一部の人しかその存在を知らない「一般人は立ち入り禁止」という、なんとも怪しい場所だ。しかぁし!そんなものは我がミステリー研究部の情報網にかかれば、存在はおろか内部の構造図まで入手可能なわけだが。(本当は、ユウが犬の散歩の帰りに偶然発見しただけだし、構造図は山にテント張って頑張っちゃってる研究チームのデータを盗み出しただけ。人、これを窃盗という。)
てなわけで、無視されているであろうレポートのリベンジ版のネタとして、そして未だかつてない本格的なミステリー研究部の活動として、今回の作戦を準備実行するに至ったわけだ。

「そろそろだな。」
双眼鏡で中腹を職員室を監視していたユウが、時刻を確認しつつ呟いた。
夕方、双方が手薄になったのを見計らって行動を開始する段取りである。
「それじゃあ、B地点で落ち合おう。」
最終確認をとるユウ。
「おう」
短くかつ、不敵に答える。
「「作戦、開始」」