1話
時は2024年、中国は突如軍事行動を開始。日本、北朝鮮、韓国、台湾への同時侵攻を行った。突然の攻撃に日本はなす術もなく、2025年に降伏、他の3ヶ国と共に中国改め東アジア共和国の支配下となった。が、当然この支配に不満をもつ者も多く、そういった人々の多くはテロに走った。
2028年、一部のテロリストらが情報交換、テロ支援組織"ターミナル"を結成。ここに、東アジア共和国対"ターミナル"の戦いの構図ができあがった。そして、時は流れ2030年。新たなテロの火蓋が切られる。
東京の空は今日も暗い。東アジア共和国の重工業政策の賜物なのか、それとも今の時代を反映しているのか、空はスモッグに包まれていていつも黒い。
新東京駅のホームで、影村黒乃はその空を見上げながらぼうっとしていた。
影村黒乃。"ターミナル"の傘下のテロリストの少年で、今日もまた、ある目的でここに来ていた。と、言っても今日の活動は要人の暗殺などではなかった。
「生物兵器・・・ね」
手元にある資料を読み、一人ごちる。
"ターミナル"は東アジア共和国の軍部が最新の生物兵器を開発、私鉄の電車を利用してこっそり運ぼうとしているとの情報をキャッチ、その新兵器を強奪すべく黒乃らを派遣したのである。と、向いの階段から、水色の髪の少女と金髪の少年がこちらにやってくる。
「おまたせ、黒乃。」
「来てやったぜ〜」
2人は黒乃の仲間である。2人ともその辺の少年少女の身なりを装っているが、一流のテロリストである。
「状況は?」
と、水色の髪の少女、綾瀬 渚が黒乃に尋ねる。
「現在ターゲットは新代々木の駅を通過。後10分でここに到着する予定だ」
黒乃が現状を述べる。
「後10分あるんなら、俺はもう待ち伏せてるぜ〜」
「勝手にしろ」
気楽そうな口調の少年、天堂 七翔は一言残して人ごみの中に消えた。
「・・・・ところで、さ。」
「どうした?」
渚は何か、腑に落ちないような口調でしゃべり始める。
「私たちがこれから強奪する兵器の事だけど、いったいその兵器って何なの?上の方はただ兵器を奪ってこいとしか言ってないし・・・・・黒乃、知ってる?」
「・・・・恐らく」
と、一旦間を置く。
「前もって渡されてる情報の中にはただの生物兵器としか書いてなかったが、気になったんで自分で調べてみたんだ。」
「それで?」
「以前、政府が実験していた兵器の中に人間兵器をいう代物が有ったんだ。当時は失敗ばかりで物の役に立たなかったそうだが、ここ最近研究が再開され、プロトタイプが完成したそうだ。」
ここで相手の反応を待つ。渚はすぐに兵器の正体に気づいたらしく、顔を青ざめさせていた。
「黒乃・・・まさか」
「そのまさかだ。奴ら、人間を兵器に改造したんだ」
黒乃は忌々しそうに悪態をつく。
「どういう代物かは見当はつかないが、これが量産されたらきっとテロの撲滅にとりかかるだろう。今回の任務、俺たちの責任は重いぞ」
その時、駅のアナウンスが彼らの目的が乗っている電車の到着を告げた。
「来たわね・・・」
「任務開始、内容、新兵器の強奪。・・・・渚、行くぞ」
カバンから愛用の銃を取り出し、2人はホームへの階段をかけ降りた。
階段をかけ降りるなり、黒乃と渚は敵の銃弾を受けた。しかし、彼らの服のしたには防弾チョッキがあるため、弾は彼らの体を貫くことはなかった。黒乃は即座に銃を射ってきた男を射殺し、同じような男に囲われているトランクをもった男に突進した。
(敵の数はざっと10人、て所か・・・・)
黒乃は敵の銃弾をやり過ごすため、柱の陰に隠れながら発砲する。
「これで残りは8人。」
2人の男が額から血を吹き倒れる。
彼が柱で銃弾をやり過ごしている間にも、敵の数は見る間に減っていった。敵の背後に回っていた渚が正確にナイフで首を切りつけ、辺りは血の海となっていた。渚自身も、すでに返り血で髪の毛が赤くそまっている。と、突然敵の数人がいきなり倒れる。
「さすがと言おうか……」
さきほど、敵を狙撃するために消えた天堂七翔のライフルだった。残りの男どもの眉間を正確に射ち抜いている。残っているのは血の海で腰を抜かしながらトランクを後生大事そうに抱えている男だけだった。男は中国語でなにやらわめいていることから中国人だろう。
「わ、渡さん!これは、お前ら全滅させるために必要な兵器なんだ!あ、あっちに行け!」
黒乃は中国語を理解できる。が、男は動揺しているのか、秘密のはずの兵器のことをあっさり口に出している。
「死ね。」
黒乃の一言とともに、銃が火を吹く。頭を貫かれた中国人は、血を振り撒きながらその場に崩れた。
「渚、トランクの中身は?」
と、渚に中身の確認を頼む。
「はい……と、ずいぶんと固いのね、このカギ。」
渚はカギをこじ開けようとしているが、手間取っている様子だ。このままでは、警察が到着してしまう。
「あー、初めっからこうすればよかった!」
見ると、渚はナイフを使い、力まかせにカギをこじ開けていた。
「・・・中身は?」
「あ、ごめんなさい」
渚がトランクを開ける。・・・と、そこには。
「・・・・!」
「これは・・・!?」
トランクの中身は10歳ほどの幼女だった。
「黒乃!?」
「なんてことだ!!
その時、駅の外からけたたましいサイレンが聞こえてきた。見ると何十台ものパトカーが駅を囲もうとしている。黒乃はピッチで七翔に逃げるよう指示。自分は生物兵器の少女をおんぶして、渚と共に線路から逃走した。