僕は知っていたんだと思う。ここが見知らぬ場所だと。
回りは暗く。わかるのは建物のてっぺんだということ。うっすら見えるのは、生き物を模した乗り物や置物がある。

僕は知っていたんだと思う。今自分が独りだと。
自分が知っている人は周りに一人もいない。自分を知っている存在も周りにいない。

僕は知っていたんだと思う。回りにいる者は自分とは違う存在だと。
下を見下ろすと自分と限りなく近く、けど違う存在がたくさんいる。まるで何かの大郡が列を成して行進してるかのように。

ガチャリ。
音に反応して僕は振り向く。
そこには首下から足まで繋がった着物をまとった者が立っていた。
違う存在でもそれが美しい存在なのだとはっきり感じた。
その者は目を丸にしてこちらを見ている。
その視線が僕の視線と混ざり合う。
口を開き何か奇妙なものを見ながら言うように、
「君・・・何?」
その言葉がその者から受けた最初の言葉だ。

僕は知っていたんだと思う。ここが自分の住んでいた星と違うのだと。
上を見上げると数えることの出来ないくらいの星が並んでいる。

僕は知っていたんだと思う。今自分が迷子になっているんだと。