第四拾話 空の下で・・・
2040年
戦いから10年が過ぎようとしていた。
セレネたちはあの戦いのあと、行くあてがなく俺たちがそれぞれ引き取ることになった。ルナ、ディアナは渚が、アルテミスは七翔が、セレネは俺が預かることになった。が、アルテミスは自分の力で生きたいとのことで、七翔との同居を断った。そのときの七翔の顔は今でも忘れない。No2は元々生物兵器として無理のある体だった上、戦いの怪我によって死んだ。


戦いの爪痕も大分なくなり平穏が当たり前になった2035年ルナ、ディアナは短い人生に幕を閉じた。元々無理のある体だったから、当然といったら当然なのかもしれない。


2038年にはアルテミスが事故で死んだ。生物兵器としての能力が大分無くなったのも理由の一つだが、アルテミスはみんなと別れたあと世界を旅して回っていたそうだ。今まで閉じた世界にしか居なかったアルテミスにとって世界はとても興味のあるものだったのかもしれない。しかし、その旅先で川に溺れた子供を助けようとして死んだらしい。


そして2040年。
風はとてもさわやかで誰もが気持ちいいと感じるほどの天気。
俺の周りには数え切れないほどの十字架の形をした墓石。
10年前の戦いで死んだ人達の墓が集まった記念公園だ。
その中に俺はいた。
目の前にも墓石がある。そこには、
“セレネ”
そう書いてある。
生物兵器最後の一人だったセレネは、去年の冬に体調を崩し寝たきりになった。病状は不明。多分生物兵器としての性がセレネにもきたのだろう。
体調は良くなることはなく、一ヶ月と待つまもなく目蓋は二度と開くことが無くなった。
ベッドの上から空を見て、今際の際が
「お空青くて、きれい」
空は工場の煙が消えて青空がのぞくようになった。そんな空を見てセレネは今がもう平和であることを確かめたのかもしれない。
俺は墓の前で手を合わせ花束を添えた。そして、空を見上げた。
今日も雲ひとつ無い快晴。
聞こえてくるのは銃声ではなく、鳥のさえずり。
戦いは終わり、平穏が始まった。
それは、当たり前のようでとても大事なもの。
だから、俺たちは生きていく。
精一杯生きていく。
戦いで死んだ人達に見せても恥ずかしくないくらいの人生を
この空のした謳歌しよう
それが、俺たちに出来る唯一のことだから。
あとがき
終わった・・・・
すべて終わった・・・しかし、
終焉は始まりで始まりは終焉。
いつまでも続く螺旋の中で己が信念を糧とし、
理解できぬ虞像の世界で生き抜いて見せろ。
それが貴様に出来る唯一の戦いだ。
by鱈の弧