流れる沈黙。滴る鮮血。まるで時が止まったかのように・・・しかし決して止まることの無い流れ。
その男は戦い続けてきた。それが多くの者から否定される様なものであっても。
その男は戦い続けてきた。他の業を制す為に、己の業を大成させる為に。
その男は戦い続けてきた。その瞬間まで、断ち切る者が断ち切るまで・・・
「ふん・・・やはり・・・お前だけは、迷いなど無かったか・・・・」
男は―――村松はただそれだけ言うとその場に倒れこんでしまう。
村松から流れる鮮血。彼を撃ったのは黒乃でも七翔でも渚でも・・・NO.002ですらなかった。ただ一人、唯一彼を撃つことが許されたかのごとく、その者は弾丸が放たれたばかりの銃を未だ村松に向けていた。
「気分はどうですか?これが貴方の望んだものの結末です。貴方の業の先にあった結末です。さぞ満足でしょうね・・・父上殿」
真薙総冶。この世界でたった一人、唯一無二の血縁。村松を撃った張本人。
「ふん・・・っ!最悪だ。お前のような・・・小僧に・・・やられたんだからな。」
流れる血は止めどなく流れる。このまま息絶えるのも時間の問題だ。だが、それでも村松は精一杯の皮肉を真薙に投げつけた。
そんな村松の言葉を無視しつつ一歩一歩ゆっくりと村松へと歩み寄る。
「貴方と話すことはもうありません。これで終了。人生最大の親子喧嘩の・・・ね。」
村松を見下す位置に来た真薙はそれだけ吐き捨てると、死を目前に控えた村松に銃を向け・・・。
「・・・・これで、僕が成すべき事はすみました。」
全て見ていた・・・目を覆うことも出来た。逸らす事も出来た。止める事も出来た。
だが、何も出来なかった。体がその場に縛り付けられたかのように動くことが出来なかった。驚くことでは無い筈なのに、それでも黒乃たちは・・・。
そんな黒乃たちの心などいざ知らず。真薙は淡々と次の行動に移ろうとしている。
それは、今回の最大の目的。最大の破壊工作。
「さて、君達。何時までそうしてたち続けているつもりだい?これからコレを施設ごと爆破するんだよ?巻き込まれたいのかい?」
「あっ・・・」
その一言でその場に居た全員がハッとなり慌ててあたりを見回す。まるでつい居眠りをして突然起きたかのような、そんな行動を取っていた。
「はぁ・・・君達は先に逃げなさい。そんな事では邪魔になるだけだ。そこのNO.002も連れて早く行きなさい。」
誰も何も言わない。ただ、真薙の言われたとおり後ろでへたり込んで居るNO.002を立たせ、その場から離れていく。真薙はその間、ただその足音が遠のいて行くのを聞き届けていた。そうして、その場には二人・・・正確には一人と一つだが・・・
「・・・さて、僕の正真正銘最後の仕事・・・だな。」
誰も居なくなったその空間に響き渡る。
黒乃たちは無我夢中で走った。走り続けた。頭の中を真っ白にしながら、走り続けた。望んできた結末が唐突に訪れ、叶えるべき願いが叶ったも同然なのに・・・なぜか心に穴があるかのように・・・
「これで・・・よかったんだよ・・・ね。」
長い長い沈黙の末、渚がたった一言だけ呟く様に言った。それに対してその場に居た全員が静かに頷く。そして再び沈黙と共に走り続ける。
それから、30分後。
無事に施設から脱出した黒乃たちの目の前には死屍累々の戦場跡だけが残っている。その気分をより一層悪くする場所を横切っているその後ろで・・・
・・・ッドッン・・・
響き渡る衝撃と共に背にした施設が崩れ、その間から炎が立ち上がり始める。
黒乃達は足を止め振り返り、その光景をまじまじと見続けていた。理想を求めた先にあった未来。奪い合おうとする業のぶつかり合った結末。彼らが目にしていたのはそれだった。
2031年某日。新東京郊外にて激しい衝撃と共に大火災が発生。
消火作業が行われる中、その戦場さながらの光景に誰もが恐怖を覚えた。
翌年2032年。非公式部隊“ターミナル”の存在が明るみに晒された。
同年。非公式部隊を利用した裏工作を元に世界各国から非難の声が上がり、東アジア共和国内で歴史上最大の暴動が勃発。
翌年2033年。それまでの責任を問われた東アジア共和国チョン・ハン首相は国内でテロリストに暗殺される。
同年。第三者国の介入によって暴動は沈静化。同時に東アジア共和国は解体。
日本、北朝鮮、韓国、台湾は再びその名を称すことが出来る日が訪れた。
こうして、歴史上に明るみに出た東アジア共和国を巡る話は終結した。だが、この時各国では、この事件の裏に隠された生物兵器について情報を得ようとしたが、何一つ得ることすらなく。全てが闇の中へと葬られたかのようだった・・・。
2033年冬。2033年も終わりを告げようと言うその日。彼らはそこに居た。
そこには全てを清算し、テロリストの名を捨て一人の人としての生活に明け暮れていたもの達。彼らはそこに集った。
「3年・・・いや2年ぶり・・・かな?こうしてみると早いもんだな・・・。」
一人の青年がぼやくように同意を求めるように言葉を放つ。彼らは過去に浸っている・・・決して素晴らしいとはいえない過去に・・・
「結局。東アジア共和国はなくなって。色々あって・・・俺達“ターミナル”の目的は果たされた。でも、傷跡は深い・・・な。」
「そうだね・・・」
今でも草木一本生える事が無い荒地。その先には手付かずなまま残っている建物の残骸。
「そういや・・・あの人・・・どうなったんだ?あの日を最後にまったく見ないけど」
「・・・。」
誰かが問うが、その答えを誰も持っていない。そうして沈黙は流れ、やがてその場に居た全員が背を向けその場から立ち去っていく・・・。
第参拾九話 目指すべき未来
あとがき
んまぁ、39話終了。ってかお話事態がここで完結。見たいになってはいるが・・・
まぁ、もうここまできたら後は面倒だしな。
40話はコレを『綺麗!!』にまとめてくれるだろう。
っということで今回の我の最後の仕事は終わった。
以上!!
んまぁ、39話終了。ってかお話事態がここで完結。見たいになってはいるが・・・
まぁ、もうここまできたら後は面倒だしな。
40話はコレを『綺麗!!』にまとめてくれるだろう。
っということで今回の我の最後の仕事は終わった。
以上!!
byハガル・ニイド