一瞬でも気を抜けば粉々に砕け散ってしまうほどに――
止めるまもなく崩れ去っていってしまう。
些細なことですら壊れてしまう。些細な矛盾ですら歪んでしまう。
そんな人がもしすべてを否定されたら……きっと……』
それでも……
『それでも……?』
僕は信じたいのです。僕は……
『信じる……ね』
はい……だからこそ僕は彼にすべてを託したのです……
『君にそこまで言わせる子か……僕も早く見てみたいものだ』
すぐに会えます……だから……その先のことは……
『あぁ、構わないよ?もともとそれが僕の役目だからね。』
そうでしたね……それでは……よろしくお願いします。
『……君にしてはずいぶんと急かすね?』
……とうとう【奴】に眼をつけられてしまったのです。恐らく近いうちに僕は……
『そうか……残念だな。僕は君の事をとても気に入っていたのに……』
僕もですよ……それではさようなら
『さようなら。僕の始めての友よ。君が見つけ出した未来……最後まで見届けさせてもらうよ?』
第6話 奪うものと奪われるもの
「なんだよ……なんなんだよこれは……」
彼は心をかき乱される。まるで嵐にでもあったかのようにぐちゃぐちゃに成るまでかき乱される。自分の信じたもののことを・・・すべての事象と価値観を滅茶苦茶にされる。
目に映る光景のすべてが彼をかき乱し・・・完膚無きまでに打ち砕こうとしている。
「世界が消えてる……世界が……世界が……喰われてる……」
その言葉は現実離れしてとても抽象的で比喩的な表現にしか聞こえない……だが、彼が見ているものは文字通りの出来事が起きている……
天にも届きそうな巨大な建物が十も二十も建っておりその建物はみな等しく少しずつ少しずつ――まるで風に吹かれた埃が舞い散るようにその姿は静かに存在を失い続けている。
そして失われた存在のカケラが何か大きなものに吸い込まれるようにある一点へと集結している。それをなぜ『喰う』と表現したのか……己ですら理解できていない。
「一体……どーなってんだよ!?そもそもここはどこなんだよ!?」
「『どこか?』何てずいぶん可笑しな問いをするんだね。君はもう解っているだろう?解っていて……その上で必死に否定しようとするがゆえにそんな問いがでるのかな?でもね……」
存在無き声はあえて言葉を切る。そこから先を言わせるつもりなんだ……俺自身に……だからそこから先を言おうとしない。
そして、俺自身もその先を言おうとはしない……いえるわけが無い!そんなことを認めるわけには――認めたくなど無い!
「君は……言ったよね?君自身の言葉で……君自身の心を――君なりの覚悟を。だったら目を背けちゃいけない。逃げるにはさすがに早いな」
その言葉がやけに響く……心の奥底で轟音となって響き渡る……今ある自分を咎めるかのように……説得させるかのように……
「認めたくないだろう……認めたくないだろうさ。でも」
「そうだ……認めたくなんか無い……っ!でもそれが真実だって言うなら……これが求めた物だって言うなら……!」
そうそれこそが俺が求めた答え……目を背けて続けた真実。
――その時の俺は本当に情けない奴だった。駄々をこねる子供だってもう少しましだっただろう。
――俺が生きた中で最も情けなく……最も惨めな姿だった。
――そして、それは同時に俺自身が最も……
「認めるしかないんだろ!?ここが……この世界こそが……!俺の本来居るべき世界だって!」
「本当に……彼にそっくりだ」
――俺自身であった時だ
「さて……君はこれからどうするのか聞いていいかい?」
「あんた解ってるんだろ?わざわざ言わなくてもよ……ってかそもそも何処いんだよ!?」
「ふふっ、探しても見つけられないよ。それに解っていてもさ……君の口からちゃんと聞きたいんだよ」
答えるしかなさそうだ。むしろそうすることで俺自身の目標であることをしっかりと自覚させたいのだろう。お節介なことだ
「はぁ……俺はこれからこの世界を取り戻す。どうしてこうなったのか、どうすれば元に戻せるのか……なんて解らない。それでも俺は俺の居るべき場所へ帰るためにこの世界を元に戻す」
そうだ。それが俺の目的。そして俺の決意。俺の……真実に対する答えだ。
「それが、多くの人の幸せを奪う――世界の敵になることでもかい?」
「世界の……敵?あんた……一体なんなんだ?姿が見えないだけじゃない。一体何を知ってるんだ」
「君たち役者を舞台に上げるために必要なすべてを……ね。だから僕の語るべきことをすべて語ろう。上がるべき舞台へと誘う為に……」
「……いいだろう。聞いてやるよ。あんたの言う舞台に上がる為にな」
――そして俺は舞台へとあがる。後の英雄となるため……悪役としてスポットライトに照らされる
――多くの幸せを奪う世界の敵となって、世界を救う……道化のような役を演じる
――すでに迷う時間も、立ち止まる時間もないだろう……だから、だからこそ
「っ……まぶしいな」
俺は戻ってきた。役を変えこの
俺は世界を見た。そよぐ風、降り注ぐ太陽の光それらすべてがはりぼて……作り出されたまやかしの世界を……そう、これから壊すのだ。
このはりぼての箱庭を壊し、居るべき場所へ帰るために。幻の対価に奪われた自分を取り戻すために。
「さて、まずはあいつの言ってた……『レギオンリング』だっけ?そこ目指すかぁ」
俺は大きく変わった。真実を見たことで知った……得たものの愚かしさを。失ったものの大切さを。だから取り戻そう。
奪われた自分を――自分の居場所と記憶を……それがたとえどんなものであろうとも、どんな場所であろうとも。俺は取り戻そう。
他の誰かがそれを望まず立ちふさがろうとも、俺は取り戻そう。そう……
俺には時間など残されていないのだから……
あとがき
え〜お久しぶりですハガル・ニイドです。
もし待っていた方が居るのならば感謝の言葉と共に「おまたせしました」
よくよく見てみると5話からすでに1年経っているという脅威。
不定期更新にも程がありますね。うん。要改善項目ですね。
これからもどーなるか先行き不明。一寸先が深淵なこの作品を読んでいただけるなら
是非最後までお付き合いくださいませ。
え〜お久しぶりですハガル・ニイドです。
もし待っていた方が居るのならば感謝の言葉と共に「おまたせしました」
よくよく見てみると5話からすでに1年経っているという脅威。
不定期更新にも程がありますね。うん。要改善項目ですね。
これからもどーなるか先行き不明。一寸先が深淵なこの作品を読んでいただけるなら
是非最後までお付き合いくださいませ。