ケンジはまだぼーっとしていた。
まあ、いつものことと言ってしまえばそれまでだが。
その隣で、いきなりトシオが騒ぎだす。
「ケンジーーーーー!!!!!」
Mr.ハイテンション、トシオは今日もテンションが高かった。
壮絶極まるあの事件をもってしても、
このSA高校の「生きる伝説」にダメージを与えることはできなかったようである。
「なんだよ。耳元で叫ばなくてもわかるって。で?なんだよ。」
ケンジはかったるそうに返す。
「て、転校生みたいよ」
その横からチズルがさり気なく答える。
「ふーん」
その時、先生が入ってきた。
「転校生を紹介する。入ってきていいぞ。」
ケンジは瞬時に固まった。
古代兵器の発掘現場で見た、あの二人だった。
「ユナです。よろしく♡」
ユナがポーズをとって言った。
「レオです。よろしくお願いします。」
レオは真面目に言った。
「ハイ、ハイ!自己紹介はそんなもんにして、授業やるよ!」
先生ははきはきしていた。
チャイムが鳴り、4時間目が終了した。
お待ちかねのランチタイムである。
「ケンジー屋上で召し食うぞー」
「・・・あっ、ああ・・・」
気の抜けた返事をするケンジ。
屋上は空気が澄み切っていた。
「いったいあいつら何しに学校きたんだろうな」
ケンジが空を仰ぎながら言った。その時、
「さーね♡」
「!!!!!!!!」
不意をつかれびっくりするケンジ。
ユナを
「お前らに頼みたいことがある」
レオが真剣な顔付きで言った。
「ここでは話せないことだ。明日は休みだろ?」
「そうでぇーす!!」
トシオは相手の空気を無視したバカ元気さで答える。
だが、レオは気にもしない。
「よかった。それじゃあ明日」
それだけ言うと、レオとユナはスタスタと去っていた。
ケンジは、ぼーとしていた。
トシオは明日のことばかり言っていた。
午後5時、学校も終わり、ケンジは既に帰宅している。
「何だよ、話って・・・」とそんなことをぼやきながらPCゲームをしていた。
だが、ゲームをしても、寝ようとしても、何をやっても
レオが言っていた話のことが頭から離れず、気を紛らわすことができずにいた。
「くそー、何なんだよ・・・」
ケンジは段々イラついてきていた。
「あーもうっ!!!」
お気に入りの枕、『絶対安眠君』が宙を舞った・・・。
「もう寝る!!」
ついにはケンジ、夢の彼方に思考を飛ばそうと、ふて寝を敢行する。
何時間たっただろう・・・
隣りで聞き覚えのある着うたが流れていた。
『・・・君のー姿はー僕に、似ているー・・・』
「・・・電話か・・・」
ケンジが眠そうに電話に出た。
「ふぁい」
「ケンジーー!!オレだよオレ!トシオだ。」
この男、眠気無し。
「今から例の発掘現場に来いってさ。」
「今から?・・・わかった。・・・」
ケンジはそんな返事をしながら静かに家を出た。
月がなんだか、妙に明るかった。