第7話 転入
あの悪夢のような出来事があってから3日目の朝、ここは教室・・・
ケンジはまだぼーっとしていた。
まあ、いつものことと言ってしまえばそれまでだが。
その隣で、いきなりトシオが騒ぎだす。
「ケンジーーーーー!!!!!」
Mr.ハイテンション、トシオは今日もテンションが高かった。
壮絶極まるあの事件をもってしても、
このSA高校の「生きる伝説」にダメージを与えることはできなかったようである。
「なんだよ。耳元で叫ばなくてもわかるって。で?なんだよ。」
ケンジはかったるそうに返す。
「て、転校生みたいよ」
その横からチズルがさり気なく答える。
「ふーん」
その時、先生が入ってきた。
「転校生を紹介する。入ってきていいぞ。」
ケンジは瞬時に固まった。
古代兵器の発掘現場で見た、あの二人だった。
「ユナです。よろしく♡」
ユナがポーズをとって言った。
「レオです。よろしくお願いします。」
レオは真面目に言った。
「ハイ、ハイ!自己紹介はそんなもんにして、授業やるよ!」
先生ははきはきしていた。
チャイムが鳴り、4時間目が終了した。
お待ちかねのランチタイムである。
「ケンジー屋上で召し食うぞー」
「・・・あっ、ああ・・・」
気の抜けた返事をするケンジ。
屋上は空気が澄み切っていた。
「いったいあいつら何しに学校きたんだろうな」
ケンジが空を仰ぎながら言った。その時、
「さーね♡」
「!!!!!!!!」
不意をつかれびっくりするケンジ。
ユナを(はべ)らせたレオが背後から現れる。
「お前らに頼みたいことがある」
レオが真剣な顔付きで言った。
「ここでは話せないことだ。明日は休みだろ?」
「そうでぇーす!!」
トシオは相手の空気を無視したバカ元気さで答える。
だが、レオは気にもしない。
「よかった。それじゃあ明日」
それだけ言うと、レオとユナはスタスタと去っていた。
ケンジは、ぼーとしていた。
トシオは明日のことばかり言っていた。


午後5時、学校も終わり、ケンジは既に帰宅している。
「何だよ、話って・・・」とそんなことをぼやきながらPCゲームをしていた。
だが、ゲームをしても、寝ようとしても、何をやっても
レオが言っていた話のことが頭から離れず、気を紛らわすことができずにいた。
「くそー、何なんだよ・・・」
ケンジは段々イラついてきていた。
「あーもうっ!!!」
お気に入りの枕、『絶対安眠君』が宙を舞った・・・。
「もう寝る!!」
ついにはケンジ、夢の彼方に思考を飛ばそうと、ふて寝を敢行する。
何時間たっただろう・・・
隣りで聞き覚えのある着うたが流れていた。
『・・・君のー姿はー僕に、似ているー・・・』
「・・・電話か・・・」
ケンジが眠そうに電話に出た。
「ふぁい」
「ケンジーー!!オレだよオレ!トシオだ。」
この男、眠気無し。
「今から例の発掘現場に来いってさ。」
「今から?・・・わかった。・・・」
ケンジはそんな返事をしながら静かに家を出た。
月がなんだか、妙に明るかった。
by最強のD.C.使い