トシオに呼ばれて採掘場へ来て見るとすでにトシオが古代兵器の前に立っていた。
「トシオ、いきなり何だよ。こんな時間に呼び出しやがって。」
着くなりすぐにトシオに文句を言う。
「わりぃーわりぃー。実は気になった事があってどうしても確かめたかったんだ。」
いつもハイテンションなトシオが何時に無く冷静に話をする。
「確かめたい事ってなんだよ?」
トシオの雰囲気に顔が険しくなるケンジ。
「実は確かめたい事ってのはな・・・。」
「あっ!いたいた!レオ。やっぱりここ居たよ。」
トシオが言いかけたその時。突然横から妙に明るい声が会話に割り込む。
「あんたたちは・・・!」
月明かりに照らされながらケンジ達の方へレオとユナ近づいてくる。
「・・・大体予想はついたが・・・やはり来ていたか。」
ある程度距離を置き二人はは歩みを止める。
「話は明日のつもりだったが、ここの方が都合がいい。今ここで話すとするか。」
「・・・なんだよ。話ってのは・・・。」
「まず単調直入に言おう。俺たちに協力しろ。」
あまりの唐突に投げかけられた言葉に二人は一瞬その言葉の意味を理解出来ず唖然としていた。
「ん〜何だか全然理解してないみたいだね。」
ユナが軽く貶す様に言う。
「まぁ、当然か。なら、順番に話していくべきだな・・・そうだな。まずはその後ろにある兵器について話すべきだな。」
健二達からさっきまで唖然としていた顔がすぐに消え険しい顔になった。
「その兵器はもともと地球で作られた物じゃない。」
「はっ!?何言ってるんだよそんな馬鹿な話があるか?」
その一言に驚いたトシオが思わず反論をする。
「それならこれは一体何時、何処で、どうやって出来たって言うんだ!大体なぁ・・・っ」
トシオの反論はレオの異様な威圧感によって一瞬で押し殺される。
「・・・それが何時、何処で誰によって作られたか。そしてどんな力なのかは俺たちも知らない。だが、それがどれほどの威力をもつ兵器かは知っている。」
「一体どれだけの威力があるって言うんだ・・・。」
ケンジが恐る恐る問い掛ける。
「その威力はこの地球を・・・いや、全宇宙だって消し飛ばせるほどの威力を持ってる。」
「なっ・・・そっ、そんなSF見たいな話誰が信じるか!」
ケンジは話があまりにも大きくなりすぎて、頭が混乱してきた。
「信じる信じないいは勝手だけど〜大切なのはこの後なのよねぇ。」
「そうだ。重要なのはこれからだ・・・確かにその兵器は桁外れの威力を持つが実際問題それを起動させる事が出来ない。」
レオが再び二人に向かって歩き出す。
「この兵器はある特定の存在のみに反応し起動する。それを俺たちは【適格者】と呼んでいる。」
「【適格者】・・・?」
「そっ!兵器自信が自動的に自分のエネルギーの粒子を周囲に振りまいて生物に付着させる。そのエネルギーと反応を起こした生物がずばり【適格者】ってわけ。」
そこまで聞くと大体の予想が出来たケンジ。その疑問を言葉にした。
「・・・つまり、俺たちが。」
「そう。お前たち二人がその【適格者】と言うわけだ。」
その放たれた言葉は二人をますます混乱させた。
(俺たちが【適格者】?つまり俺たちがこの兵器を起動させて使う事が出来るって事なのか?)
ケンジは混乱中、心の中で自問自答を繰り返し続ける。
「あ〜あ。ますます混乱しちゃってる。」
「まぁ、そんな事はどうでも良い。」
レオはユナの言葉を軽く流し話を戻す。
「さて、話すべき事は話した。もう一度言う。俺たちに協力しろ【適格者】であるお前たちの力が必要なんだ。俺たちの所属する組織『災危』には・・・な。」
「・・・もし、協力しないと言ったら?」
「けっ、ケンジ!?」
ケンジから思いもよらない返事にトシオが思わず叫んだ。その返事にレオの表情は少しずつ変化しつつある。
「そんな事言わなくても解る・・・だろ。」
次の瞬間何も持っていなかったはずの手に大きな鎌を握っていた。
「組織に協力しないものはつまり敵。敵は消す。当然の事だろ。」
鎌を持ったまま一歩又一歩、ゆっくりとケンジたちに近づいてくる。
「くっ!」
二人は無意識の内に身構え後ろへ下がる。
「このままじゃまずい。逃げるぞ。」
「同感。」
二人にしか聞こえない小さな声で言い合う。
「いいか、12の3で左右に逃げるぞ。」
「やり方が古典的だな。」
「五月蝿い。いくぞ。12の・・・」
二人は逃げようとしたが、逃げる事が出来なかった。
「人間がそう易々と俺から逃げられるとでも思ったのか?」
「なっ!」
ケンジの後ろに居るレオがケンジの首元に鎌を構えながら言った。
(みっ・・・見えなかったなんてもんじゃない!)
横目で見て見るとユナが長剣をトシオに突き付けている。
「さて、これで最後だ。俺たちに協力しろ。もしNOなら今すぐお前の首を斬る。」
まさに決死の選択だ。
「さぁ、どうするのかなぁ?」
ユナが笑いながら言う。場にそぐわない明るい声とは裏腹に剣には異様な殺気があった。
「・・・ケンジ。後のことはお前に決めさせてやる。お前の好きな方を選べよ。」
トシオが突然無茶苦茶なことを言う。
「おっ・・・俺たちは・・・。」
ケンジが答えを出すその瞬間。異変が起きた。首元にあったはずの鎌がなくなっている。否、後ろに居たはずのレオが弾き飛ばされたかのようにして宙を舞っている。
「ぐぁぁぁ!」
「レオ!」
10数m先まで飛ばされそのまま地面に叩きつけられる。
「くっ!力が発動したのか?いや、まだ使えるはずが無い。なら今のは・・・。」
「レオ!大丈夫!?」
ユナがレオの元へ駆け寄る。
「レオしっかりして!」
「あぁ・・・大丈夫だ・・・だが、今のは一体・・・?」
「私ですよ。」
突然何処からか声がする。
「駄目じゃないですかせっかく兵器を見つけたのにそれを起動させる【適格者】を殺そうなんて。」
4人の目の前からまるで浮き出てくるかのようにして男が現れた。
「貴様、何のつもりだ!お前は俺たちのサポート為に来たんだろ。何故勝手な行動をする。」
レオがユナの手を借りて起き上がりながらその男に問い掛けた。
「何故かって?そりゃ一つしかないじゃないですか。」
そこで区切ると男は不適な笑みを浮かべながらレオ達に向けて手をかざす。
「裏切る為に決まってるでしょ。」
そして、手が一瞬光を発した次の瞬間。起き上がったはずのレオが再び地面に這い蹲る事となった。それもユナの一緒に、まるで何かに押し潰されるかのようにして。
「きゃ!うっ・・・動けない。」
「ぐっ!貴様、自分で言ってる事が解ってるのか?俺たちに勝てる気で居るのか?」
レオが地面に這い蹲っていながら男に言った。
「いえいえ、今の私ではそこに留めて置くのが精一杯倒すなんて無理です。そう・・・今の私では・・・ね。」
男が不気味な笑みを浮かべたままケンジたちの方を向く。
「だが、この兵器の力を手にする事が出来ればあなた方を倒せるどころか全てを支配する事だって可能だ。」
不気味な笑みを浮かべ男がケンジたちに近寄る。
「絶対無敵とも言えるこの力を手に入れるためにはあなた達の力が必要だ。だから、あなた達の力を私によこしなさい。」
あるはずの無い場所から刀を取り出す。そして、迷わずケンジ達の方へ確実に向かってきている。
「おい、俺が何時までもこんな姑息な技で抑えられるとでも思ってるのか?貴様の技は「重力制御能力」。今は本来の重力の何十倍にもして俺の動きを抑えてるようだがそんなもの制御範囲外の所まで行けば何の問題も・・・ん?」
レオが半ば匍匐前進で進むがある一定の所で前に進めなくなる。まるで見えない何かで押し戻されるかのように。男がそれを見て不気味な笑みが更に増す。
「残念でしたね。私の重力制御を甘く見たのがいけないのですよ。重力を上から下へ押し込むだけでなく対象の外側から内側へ圧縮する重力方向を加えてその場に完全に縛り付け捕縛する重力の監獄それがその[グラビティプリズン]です。それは10分程度しか使えませんが問題ありません。」
手にした刀を振り上げケンジに向け振り下ろす。
「私が力を手にすれば問題ないのですからね!」
ケンジは攻撃を既に想定していたのですぐに反応。攻撃を難なく回避しそのまま走る。反対側では既にトシオも走って逃げていた。
「・・・ふむ、二人居ても邪魔なだけですね。」
攻撃をかわされ地面に突き刺さった刀を抜きながらあごをかく。
「一人死んでもらいますか。」
刀が地面から抜けたかと思うと既にその場には姿が無い。そして、次の瞬間ケンジの顔が青ざめる。
「あっ・・・あぁ・・・と・・・トシオぉぉぉ!!」
ケンジが見たのは標的を変えトシオに狙いを定め斬り付ける男と刀が深々と切り込まれ大量の血を流しているトシオの姿だった。
「とっ、トシオ・・・」
ケンジは青ざめて顔のままその場に立ち尽くす。
「これで一人片付いた・・・さて、もう一人の方を利用して力を手にしますか。」
刀についたトシオの血を振り払いケンジの方を向く。
「お・・・お前ぇぇぇぇぇ!!」
ケンジは我を忘れ男に突進していく。
しかし、男はまるで何事も無かったかのように突進をいなす。その結果ケンジはその場に倒れこむ事となった。
「無駄な足掻きを。」
男がケンジを嘲りと見下しの眼で見つめる。
(畜生!なんでだ・・・どうしてこんな事になるんだ!畜生・・・ちくしょぉぉぉおおお!)
バクン・・・
「・・・?」
一瞬周囲の空気が異常な変化をあらわす。
バクン・・・
「・・・なんだ?これは・・・何が起きてる。」
バクン・・・
空気が異常なほど振動する。
「っ!この振動は兵器からか!」
バクン・・・
レオとユナが古代兵器の方を見ると古代兵器がまるで鼓動するかのように動いている。
バクン・・・
そして、その振動はケンジとトシオへと流れ込むように進んでいる。男から笑みが消え焦りの色が出てきた。
「・・・どうやら、力が目覚めかけているようですね。手に入れられないのは残念ですがあなたにも死んでもらう必要があるようですね。」
刀を再び振り上げケンジ向けて振り下ろす。
バァン!!
ケンジから激しい光が放たれ男はその衝撃によって10mほどの高さを舞った。
「ぐがっ!」
男は思いっきり地面に叩きつけられ大きく跳ね上がる。
「何という力・・・まだ発動してまもないのにあれだけの力・・・やはり捨てるには惜しい力だな。」
男が再び不気味な笑みを浮かべるがそれがその男の生涯最後の表情であった・・・。
「所詮この程度か。あの程度の衝撃で制御が出来なくなるとは・・・身の程知らずもいいところだな。」
レオは今の衝撃によって重力制御が解除されるや否や男の首を迷わず斬り飛ばした。
「・・・能力が覚醒してしまったか・・・。」
レオがケンジをにらみつける。そこに、気だるそうにユナが近寄ってくる。
「うぅ・・・まだ体が重たい・・・。レオ、今日はもう帰ろ。」
「そうだな・・・。」
それだけ言うと二人はその場から消え去った。
「・・・行った・・・な。」
ケンジはその場に突っ立ったまま今の一連の流れを見ていた。
「あっ!トシオ!」
一瞬忘れていたトシオの事を思い出し駆け寄る。
「おいトシオしっかりしろ!」
「ん・・・んん〜。」
必死で揺するケンジをしり目に気の抜けた声で返事をする。
「トシオ・・・お前、大丈夫なのか?」
ゆっくりと体を起こすトシオを心配そうに見つめる。だが、そこには切られたはずの体がなんともなっていない。服だけが斬られた痕跡を残しているだけだ。
「・・・とりあえず助かったんだ!ラッキー!」
まるでさっきまで死に掛けて居たとは思えないほどハイテンションなトシオの表情に呆れる。
「・・・っま、いいか。」
座り込んでいるトシオを引っ張り起こしその場を後にすることにした。
第8話 選択
by規則破りの作者