第13話 心情
2泊3日の修学旅行も明日でついに最終日。
AS高校の生徒はみんな遊び疲れてぐったりしていた。
しかし、ケンジの疲労はそんな彼らと比べにならない程だった。
ケンジはそれを振り返りながら寝ようとしていた。
トシオには、
「おぉっ!?何だあれ!?ケンジ見ろよ!!すげぇぞ!!うぉっ!!あっちにも!!」
と、いう感じに京都にあるほぼ全ての建造物を
トシオが見たいが為振り回されたり、
レオはレオで、
「なかなか地球もおもしろいところだな、ケンジ」
とか言いながら、様々なゲームで常に1位をもぎとっていくし、
(ちなみに全て賭け勝負。俺の金返せぇぇぇーーーーーー!!)
ユナはもう、
「京都つまんな〜いっ!建物見ても全っっ然おもしろくな〜い!!」
と、言っていた時はまだ良かったが、
「やっぱさぁ〜、壊してこそ芸術だと思わない?」
って誰も賛成しない意見を言い放ちながら、
金閣寺で破壊活動をし始めるし、
(金閣寺の一部が消えたことはここでは気にしない方向で)
チヅルは、
「私、ケンジ君のことが―――――」
チヅルは…………。
「――――――大好きです。」
チヅルは……………………。


チュン、チュン
鳥の声が聞こえる。
結局、チヅルのことが気になってケンジは一睡も出来なかった。
何故だろう?
チヅルは自分のどこに魅かれたのだろうか?
と、ケンジはそんなことをずっと考えていた。
一番、大切なことを忘れて。
「ケンジー!飯食いに行こうぜ!!」
例のごとく、朝っぱらからハイテンションの"コイツ"は、
人の気も知らないで、大声で朝食に誘ってきた。
同じ部屋なのに。
「……………ああ。」
一応、返事はしておく。
このホテルでの朝食はバイキングだ。
学校の生徒は一階のパーティー会場に集まって食べることになっている。
中学の修学旅行は酷かった。
学校のお金がなかったせいか、
班に分かれて、コテージや民宿に泊まった。
俺が泊まったのが『ファニリハウス』と言って、これがまた………。
まぁ、この話はまた今度にしておこう。
「ん?どうした?なんか疲れてないか?」
トシオのそのセリフにケンジは切れそうになったが、
疲れるのでやめた。
30%位はお前のせいだ、バーロー。
「まぁ、いいや。行くべ。」
話題を速攻で変えると、
トシオは、ケンジを部屋の外に連れ出した。
すると、偶然部屋の外にチヅルがいた。
「!? ケ、ケ、ケンジ君!?」
チヅルは、驚いてそのまま走ってどこかへ行ってしまった。
「???」
トシオは、意味も分からず呆然としている。
ケンジは、そこで初めて重要なことに気づく。
そうだ。告白の返事をしなきゃ―――――


その頃、灰色の髪の少年"ムスペル"は、京都駅にいた。
「東京か。どないな場所なんやろか。」
そう彼が言っている後ろで、
AS高校の制服を着た緑色の髪の少女は柱の影から彼を見ていた。
「なぁ、どう思う?お嬢ちゃん?」
少女は驚き、彼女のツインテールが揺れる。
「………気づいてたんだ。」
少女は言葉を発する。
「当たり前や。この時間に高校生が駅なんかうろうろしとるかい!」
時刻は10:45分だった。
「じゃあ、"彼"にも気づいてた?」
そう少女は言うと、柱の影から男が出てきた。
ムスペルは驚いた。
自分を尾行していたのは一人ではなかった。
もう一人いたのだ。
長身、黒髪でオールバック。歳は20歳前後。
長いコートを着ていて、メガネをかけている。
「こいつか。奴らの仲間は」
男が言った。
「うん。奴らの一人と話してた。」
少女は答える。
ムスペルは、戦闘体勢をとりながら問う。
「お前ら、何者や?」
少女は、「クスクス」と可愛らしく微笑みながら、
気に入ったセリフを言うように答える。
「ボクの名は"フロウ"。ボクたちはキミたちの探してる『適格者』だよ」
フロウはそう言うと、制服の下に隠し持っていた棒を取り出し、ムスペルに向けた。
by絶望君