第16話 零刀
「俺に・・・守る為の力を!守護零刀!!」
ケンジが叫ぶと同時にケンジからもの凄いエネルギーが渦巻く。フロウは一時驚いた顔をしたがすぐに不適な笑みを浮かべる。
「へぇ、少しは面白くなりそうだね。」
ゾッとするような笑みを浮かべたまま構え、そして・・・
「でもね・・・無駄だ!これで終わりだぁぁぁ!!」
立っていた場所に残像が残るほどの速さでケンジに向け突撃するフロウ。その速さにより開いていた間合いを一瞬で詰めそして、その攻撃がケンジに当たるその刹那。
ドカ
ケンジに向かって一直線に向かっていたフロウが突然真横に弾き飛ばされた。
「(え!?)」
あまりにも突然の出来事にフロウは事態を飲み込めなかった。しかし、すぐに冷静になり体勢を立て直す。
「まさか、僕の動きについて来れるなんて・・・。そうでなくちゃ面白くないね!」
フロウが意気込んで攻撃の体勢に入る。逆にケンジは直立不動のまま動こうとしない。
「・・・だ。」
ケンジが口元で何かを言った。あまりにも小さい声であまり聞こえない。
「ん?何?もしかして、怖気づいちゃったの?つまんないなぁ」
再び眼にも止まらぬ速さでケンジに突っ込む。
「やっぱ死んじゃえぇぇぇ!!」
「・・・無駄だ。お前じゃ倒せない。」
小さくそれだけ口にすると手にもっていた小刀がフロウ目掛けて振りかぶる。
「っ!!?」
ケンジのカウンター気味の攻撃を間一髪かわしたが、体勢を崩しケンジの後ろに倒れこむ形となった。そこへすかさずケンジが刃を向ける。
「なんだ・・・やれば出来るじゃん。」
「一度だけ言う・・・今すぐここから立ち去れ。」
「いやだね。こんな面白いことやめられないね!」
ケンジが刃を向けているのにも関わらず起き上がり間合いを取った。
「去る気は無い・・・か。だったら、こっちもそのつもりで行く。」
それだけ言うと守護零刀をフロウに向け体勢を低くする。そして
「(ぇ!?)」
フロウが一瞬戸惑った。ケンジが二人いる・・・
「(違う!これは!)」
気づくのが一瞬遅れ防御しそこねた。
「くっ!・・・まさかそんなに速く動けるなんて。驚いた、驚いた。」
口調は軽いもののその眼は真剣そのものだった。
「それならこっちも・・・本気で行くよ・・・!」
一瞬の間を開け・・・
「「!!」」
二人が同時に攻撃に入る。その速さは音と衝撃が全て後から来るほどの速さで互いにぶつかり合う。
「・・・速すぎて見えねぇ・・・。」
「・・・ケンジ君・・・。」
話に置いて行かれただその場に立ち尽くすことしか出来なくなったトシオとチヅル。
「・・・とりあえず少し離れよう。このままだと危ねぇし。」
「うっ・・・うん。」
とは言うもののフロウが張ったバリアのせいであまり離れる事が出来ない。
「くそ!何も出来ないでただ見てるだけなんて・・・一瞬ぶつかりあった所しか見えないんじゃ意味がねぇ。」
「(一瞬でも見えるだけでも凄いような気がするけど・・・)」
とりあえず二人はレオとユナが倒れている方へ慎重に行く。彼らの安否を知る必要もある事だ。
「・・・レオ・・・?」
トシオが声をかけ揺すって見るが一向に動く気配を見せない。
「そっちは・・・?」
トシオがチヅルに聞いてみたがチヅルは口では言わずただ首を横に振るだけ・・・。
「何で・・・こんな事に・・・」

一方。高速の攻防を続けるケンジとフロウ。その中フロウは次第にあせりを感じ始めた。
「(まずいなぁ、予想外に強い・・・。それに、さっきの一撃のせいで体が思うように動かない・・・。どうにかしないとまずい。)」
今の状況を打開できる手段が無いものか必死で探すフロウ。そこへ
「(あっ、あるじゃない。一つだけ・・・)」
突然浮かべた笑みにケンジは嫌な予感がした。そして、その予感が見事的中。フロウはケンジ背を向ける・・・トシオたちの居る方を向いている。
「(しまった!)」
ケンジが気づいたときにはもう手遅れだった。
「あははは!・・・さぁ!こうしたらどうする!?」
狂気の笑いを上げながらフロウはトシオたちに向け閃光を放つ。
「ちくしょう!」
悪態をつきながら瞬時にトシオたちの前に立ち攻撃を受け止める。
「うぐっ!」
防御をしたものの衝撃に耐え切れずに体勢を崩す。
「ほらほら!まだ死ぬには早いよ!」
フロウが止めどなく閃光を放ち続ける。
「(ぐぅ・・・まだだ、もっと力を・・・俺に守る力を!)」
ケンジは強く念じ守護零刀を握り締めた。
「うぉぉぉぉぉ!!」
叫びと共に守護零刀を地面へ突き刺す。
「なに?良いのは威勢だけ?自分の武器を捨てるような事して。そんなに死にたいなら・・・これで終わりにしてあげる!」
複数の閃光を束にし一つにまとめ・・・放つ。だが、それはケンジたちに当たる前に砕け散った。地面から吹き上がる衝撃のせいで。
「えっ!?」
自分の決め手をあっさりと相殺され大きな隙を作ってしまったその刹那。
「これで終わりだ・・・」
ケンジに背後から力いっぱい切りつけられる。
「ぐぁぁ!・・・くそ!くそ!今日の所はここまでにしてあげる!でも・・・必ず・・・・!」
あまりにも衝撃に言葉も覚束ないフロウはそれだけ言い残して消えた。それを確認すると守護零刀を鞘に収めトシオたちの所へ駆ける。
「二人とも大丈夫だったか?」
「俺たちは大丈夫だけど・・・レオ達が・・・」
「・・・いや、心配ないみたいだ。」
「「え?」」
「気絶してるみたいだな。だけどしばらくは動けないだろう・・」
ケンジはそれだけ言うとその場に倒れ込んでしまった。
「お、おい!ケンジ!?しっかしろ!チヅル救急車だ!」
「あっ!うん。解かった!」
そうしてケンジは救急車で病院へと運ばれた。
by規則破りの作者