さまざまな事件があった修学旅行から帰ってきて数日後。今ではあれは夢ではなかったのかと思えるくらい平和な日常を過ごすケンジがいた。いつも通りの通学路、いつも通りの制服、いつも通りの朝、そんな中ひとつだけ変わったことがある。・・・トシオがいない。
修学旅行から帰ってくる新幹線はおろか家にもいないらしい。
いないといえば、レオとユナの姿も見ない。まああいつらのことだからあまり気にもならないが。
「おはよう、ケンジくん」
後ろからチヅルがやってきた。
「トシオ君は・・・。やっぱりいないんだ」
「ああ、なんか家にもいないらしい。この間トシオん家の人が警察に捜索願出したらしいけど、なんの進展もないみたいなんだ。やっぱり修学旅行の事件に関係してるのかな?」
「わからない。そうだったとしても・・・心配だね」
「そういえば、レオとユナもどこかに消えたな。まああいつらはあんまり心配にならんけどな。殺しても死ななそうなやつらだから」
と少し笑いながら言った。普通ならさらに暗い話になりそうなのだが・・・
「そんなこと言ったらかわいそうだよ」
チヅルも笑っている。暗い話題から少し明るくなった。
学校。教室に着くなりすぐにホームルームが始まった。先生の何気ない話。授業も特にこれといっていつもと変わらない。そんな中ケンジはトシオや今までのことを考えながらぼーっと窓の外の雲を見ている。雲はゆっくり流れている。
「・・・しま、・・くしま、・・・月島!」
「は、はい」
慌てて席を立つ。
「何をボーっとしてる。まあいい今のところの続きから読め」
慌てて教科書を開くが聞いていなかったのだからわかるはずもなく
「すいません、聞いてせんでした」
クラスに少し笑い声が聞こえる。
「ったく何やってるんだお前は。もういい、野崎続き読め」
「はい」代わりにチヅルが席を立ち教科書を読み始めた。
昼休みになりケンジは購買で買った焼きそばパンをかじりながら屋上にいた。周りにはケンジ以外いない。っとそこに弁当を二人分持ったチヅルがやってきた。
「ケンジ君、お昼一緒に食べよ」
そういうとチヅルはケンジの隣の座り、お弁当を女の子らしい包みから出した。
「あっでも、ケンジ君もうお昼食べちゃったよね」
と少し残念そうに弁当をしまおうとする。しかしケンジがその弁当を横から取った
「いや、ちょうどこれだけじゃ足りないところだったし、サンキュー」
「え、あ、・・・うん」
二人は何の会話をするでもなく弁当を食べている。っとそこにチヅルが、
「やっぱり、気になる?トシオ君のこと」
やはりチヅルも気になっていたのか少し悲しそうな声でケンジに聞いてきた。
「・・・ああ」
ケンジもあまり元気のない声で傷ついて包帯が巻かれている腕を押さえながら言った。
修学旅行の事件の後ケンジは病院に運ばれたがそのときにはすでにケンジの息はなかった。誰もが諦めいたとき、ケンジはいきなり息を吹き返したのである。医学的にも説明のできない事が起き、医者たちはただ腰を抜かすしかなかった。しかもそればかりか、傷は普通なら半年は動けない傷にもかかわらずほとんど塞がっていた。医者はおきていることが理解できていない状態でケンジを退院させた。傷はほとんど塞がっていたがやはり多少今でも残っている。
「あいつは昔からの付き合いなんだ。家が近所でよくガキのころ遊んだんだ。いわゆる幼馴染ってやつだ」
「そうだったんだ」
かなり暗いムードである。体か押しつぶされそうになるくらい息苦しい。それから数分二人はまた口を開かなくなった。
キーン、コーン、カーン、コーン。
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響く。二人は黙ったまま教室に戻ろうと立った。そのとき、いきなり二人の目の前に人が降り立った。
第21話 日常
by鱈の子