「・・・・」
(ん・・・なんだ?)
ケンジは何かを感じ取る。回りは真っ暗で何も見えない。体を動かそうとしてもまるで感覚が無い。
(誰か居るのか?)
「・・・で、いいのか!」
遥か彼方から聞こえるような微かな声・・・
「それしか方法が無いんだ。」
(・・・どこかで聞いた事がある声・・・。誰だ?)
「だからって・・・どうして今それをする必要があるの?命が惜しくないの!?ねぇ、他の方法を考えましょう。」
(・・・何を言い争ってるんだ?)
真っ暗で何も見えない中にただひたすらに聞こえる怒鳴り合い。
「無理だ。他の方法を考える程の時間なんて俺たちにはもう残されてないんだ。結局7人揃わなかったんだ。もうあれを止める手段はこれしかないんだ。」
「でも、それだってその場凌ぎじゃない!そんなの駄目!」
「そうだ。よせ!やめるんだ・・・行くな!月島!」
「っ!!」
電気ショックでも受けたかの様に跳ね起きる。その手には昨日読んでいた本が握られていた。
「・・・今の夢は・・・。」
放課後
「・・・。」
「どうしたのケンジくん。そんな浮かない顔して・・・。」
「えっ?あ、なっなんでもない。」
とは言いつつも先ほどからずっと今朝見た夢の事をひたすら考えている。チヅルが何か言おうとしたが、そこへレオが現れる。
「何の様だ?ケンジ。お前から俺を呼ぶなんて珍しい。」
「あぁ、ちょっと・・・な。ところで、他の奴らはどうしたんだ?」
「あぁ、天使たちの動向がどうも気になるから今探りを入れてるところだ。」
「そう・・・か。」
ケンジは肩を落とし力なくため息を吐く。
「それより、用ってのは何だ?まさかそれ聞くために読んだわけじゃないだろ。」
レオの一言でハッと我に帰り彼に本を見せる。
「・・・この本の内容。何だか解かるか?」
「何の本だ?」
「とにかく中を見てくれ。」
レオはとりあえずケンジから本を受け取り開く。そして、レオの顔色が一瞬にして変わる。
「・・・お前この本何処で手に入れた?」
「何処ってそれは・・・。」
ケンジが口篭る何故かあまり思い出せない。修学旅行の時に手に入れた物なのだが。
「まぁいい、ここに書かれている事に比べればそんな事気にするほどでもない。」
「そんなに重要な事なのか?竜族と天使族の歴史とかじゃないのか?」
レオの異様な焦り方に生唾を飲み込む。
「あぁ、確かにこれは両族の歴史を書いた物さ・・・古代兵器【イーリアス】を作り。それを巡り天使族と争いそして、【イーリアス】が暴走し竜族が壊滅するまでの・・・な。」
「・・・。」
あまりの事に驚きを隠せない。
「しかも、大まかではあるが【イーリアス】の設計方法まで書かれてるオマケつきだ。」
あまりの衝撃の事実に事態を半ば飲み込めていない。
「こんな危険なものは残しておく訳にはいかない。今すぐ処分する。」
「えっ?まっ、待った。」
半分放心状態になっていたケンジが慌てて止める。そして、強引にレオから本を奪い。本の最後を開く
「ここを見てくれ。この光の宝玉が無くてもこの本を使えば何とか成る。」
「・・・おい、本気でいっているのか?こんなリスクの高い事。誰が出来るって言うんだ。大体まだ、他の適格者も見つかっていないんだぞ。」
レオの当たり前のような反論に返す言葉も無くなる。
「だっ、だけど・・・。」
「お前の言いたい事はわかった。確かにリスクが高過ぎるが、俺だって可能性を捨てるような事はしない。」
その言葉を聞いてケンジはほっとする。
「とにかく今は残りの適格者を一刻も早く見つけ出す事だ。何かあってからじゃ遅すぎるからな。」
「あぁ・・・」
「とりあえず。俺はユナたちと合流する。お前はお前なりのやり方でどうにかしろ。その本もしばらくお前に預けとく。」
「解かった。」
「じゃあな。あまり悪戯に時間は掛けない方がいい。手遅れになるかもしれないからな。」
不吉とも取れるその言葉だけを残してレオはその場から立ち去る。
「手遅れになる・・・か。」
『無理だ。他の方法を考える程の時間なんて俺たちにはもう残されてないんだ。』
(そんな事には絶対しちゃいけないんだ。)
今朝の夢の事を又思い出したが意識から無理やり振り払う。そして、半分記憶の中から居なくなっていたチヅルの方を向く。チヅルも話しに入れずただボーっと、その場に立っていた。
「・・・おい?」
まるで催眠術が解けた人のように我に帰り驚く。
「な、何?」
「・・・いや、そろそろ帰ろう。」
「う・・・うん。」
まだ誰にも解からない。この戦いの先に待つものを・・・。
まだ誰も知らない。この戦いの本当の意味を・・・。
誰もがただ今目指すべき道をひたすら歩み続けるだけ・・・。
第25話 過去
by規則破りの作者