町外れの小山。
本来誰もいないはずの丘の上でレオ・ブラックは手に乗っている菓子をたべながら
同じ竜族のリョウに話し掛けていた。
「やはりHARIBOはドイツが生み出した最高の菓子だな。リョウも一つ食うか?」
「いや・・・いい。そんなことよりも、月からの増援はまだ来ないのか?」
それを聞き、レオは苦い顔をした。
「う〜ん、再三に渡って要請はしているが、あいつらすっかり月府抜けちまって
戦力としてはカウントできないな。」
「まあ、平和になったという事だ。あとは[イーリアス]さえなんとかすれば、
もうこの宇宙は危機から救われる。・・・あともう一息だ。」
リョウは20年前の惨劇を思い出しながら感慨深く溜め息とついた。
焦土となった大地で、リョウは満月を見上げていた。その体はズタズタで、
よく生きているなと思えるほどに。
(・・・ち、俺ももう終わりか・・・・・?)
先の大爆発でリョウは咄嗟に防御フィールドを展開したものの、あっさりと
フィールドごと吹き飛ばされて大地に倒れていた。
(・・・仲・・・間は・・・?全・・・・滅・・・か・・・・)
もう俺も限界かなと思いつつ、リョウはその場で目を閉じた。
「・・・・生き残ったのはこれだけか、な?」
竜族の別小隊で天使と戦っていた[災厄]隊隊長のレオ・ブラックは一人ごちた。
彼の後ろには部下のユナ、ガルム、ムスペル、カミーラが控えていた。
「レオ、竜族本隊の一部と連絡がとれたよ?」
「すぐ回せ。」
ユナから通信機をとり、レオはその隊の長と話し始めた。
「なるほど・・・・わかった。一時月に退こう。うむ。それでは。」
レオが通信を切る、と、向こうの焦地で何者かが倒れていた。
「何や、この竜もう死んでまっせ」
すぐさま脈をとったムスペルがレオに報告する。
「でも体は残っているんだろう?・・・ちょっとどけ」
ムスペルを押しのけ、レオはその死体に手をかざした。
「我が力の一つ[土]を捧げ、死を迎えし竜に今一度の命を・・・・・!」
己の力、大地の力を解放してその竜に注ぎ込む。瞬く間にその竜の体が再生を始め、
傷が癒えていった。
「・・・・っ、俺は・・・・?」
「起きたか、[土竜]」
回復したその竜を見つつ、レオはその竜を呼んだ。
「あんたが俺を生き返らせたのか?」
その言葉にレオが頷く。
「そう・・・か。いや、ありがたい。俺は[暁]隊所属、リョウだ。・・・あんたは?」
「[災厄]隊隊長、レオ・ブラック。お前、俺の隊に来ないか?[暁]はもう全滅しちまったらしいからな。」
辺りを見回しつつ、レオはリョウを誘った。
「いだろう。一度は失ったこの命、あんたのために使ってやる。」
「上等だ。では、ついて来い」
「・・・あれから20年、か。レオもずいぶんと人、いや竜柄が変わったな。」
「?どうした」
不思議そうな目をしてこちらを見ているレオを見て、リョウはふと笑みをこぼした。
「いや・・・なんでもない」
「そうか、・・・お、あいつらもやっと来た。」
レオとリョウの目下には、丘をひいこらと登ってくるユナやカーミラたちの姿があった。
「さーてと、ようやく全員集まった。そろそろ天使どもと喧嘩をおっぱじめるとするか!」
レオは声高く、聞こえよがし天使たちに宣戦を布告した。
第28話 月下
あとがき
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では、ナベ・ハヤト逝きます!
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byナベ・ハヤト