第三話 風揺れる窓辺
三人組御一行は、
またも列車に揺られていた。
今度は途中で止まりもしなければ、
『アレ』が乗り込んでくることもない。
安全に旅人たちを目的地まで連れて行ってくれるだろう。
窓の外に流れる景色、そこから入ってくる風が心地良い午後。
思わず洗濯物を干したくなる、そんな天気だ。
そんな窓枠に、椿がブスッとして顔を預けている。
そしてその隣では明日が涼しい顔をして本を読んでいる。
二人が座っている向かいの席で、歳人は困り果てていた。
乗車してからというもの、二人は一言も口を利いてくれないのだ。
とはいえ、この状況をつくり出した元凶は自分なので、
この程度の処罰は甘んじて受ける。
そう、『先日の一件』である。





「・・・君たちは一体何をしてるんだね?」
『最悪の遠足』から一夜明けた翌日。放課後、先生に呼び出され、浴びせられた第一声がこれだ。
その口調は静かながらも、明らかに憤りを抑えているものだとわかる。よく見ればその顔はプルプル震えている。笑顔が逃げ出したくなるくらい不気味だ。
三人組が何も言えず黙っていると、ついに先生がキレ、吼えた。
「国営鉄道の列車を1両破壊しその為に30分も一部運行が停止してその損害を我が朝王学園が全額負担しなおかつ担任の私は監督不行届きで減棒処分とは!!君たちはなんてことをしてくれるのかねえ!!」
マシンガンのような怒涛の怒声を前に居場所なく萎縮する3人。
「・・・まあいい。」
言うこと言ってスッキリし冷静さを取り戻した担任は続ける。
「そんな君たちには非情にステキかつ建設的な処罰を考えてある。」
そう言ってニヤリとした笑みを浮かべ、机の引き出しから一枚の黄色い紙を取り出す。
『建設的』というもの言いに明日は嫌な予感を覚えたが、あえて黙っていた。
「本当は卒業生の就職案内の求人なのだが、人手が足りないということなのでな。」
高々と掲げるようにして掌に収まっている書類を読み上げる。
「『2週間の法律適応外危険地区境界線での警護及び巡回』。これが今回君たちに与えられる処罰だ」
椿が真っ先に「えぇー!!」と声を上げ、明日がその横でやはりか、と顔を押さえている。
一方、主原因である歳人はというと、「勉強しなくてもいい」というひとり外れた解釈でひとり笑顔を見せていた。
こうして、それぞれ三者三様のオーラを称え学校をあとにしたのだった。
帰り道。少年の見せていた笑顔は二つの荒ぶる雷によって掻き消されることとなった。





「さて、そろそろかな。」
本から顔を上げた明日が時計を確認し呟く。
その声に窓枠にあごを預けていた椿が首を捻り、列車の進行方向を見やる。
「あらほんと」
興味なさ気な声が風に消え、自慢のツインテールがなびいく。
空を覆い始める灰色のカーテンと共に風が少し冷たくなってきていた。

視界の9割を巨大な壁が占める。
法律適応外危険地区境界線(アウトロウライン)
90年前に政府が築いた、天にまで届かんとそびえる境界壁である。その全長は国境まで達し、大陸を縦断している。罪人はびこる混沌地帯への最後の砦であり、この国の断罪意志の象徴でもある。ただ単に大きいということもあるが、それを差し引いても異常といえる存在感を放っていた。いっそ禍々しくすらある。視界に入れたが最後、その漆黒の闇に吸い込まれてしまいそうな錯覚を起こす。好んで地近づくのは悪魔くらいのものだろう。

結局、椿の機嫌を回復されることができなかった短い旅は終りを迎え、列車がゆっくりと目的の駅に停車する。
ホームへと降り立った3人を出迎えるように、歩み寄る影があった。
なんちゃって次回予告A
「3人組の前に現れたひとりの人物。その手に収まる3つの傘の意味するものは・・・」


なんちゃって次回予告
「歳人たちの前に現れたひとりの人物。果たしてその正体は、敵か見味方か!?
そして、椿の機嫌を直すことはできるのか!?」


あとがき
まず、提出が常軌を逸して遅れたことを心より深くお詫び申し上げます。
構想では、もっと椿をブーブー言わせるつもりでしたが、文章を展開していくうちにタイミングを見失ってしまいました。残念無念です。
リレー小説において、次回予告などというものは言語道断な代物です。ですから、これはおまけです。遊び心です。道しるべです。お気になさらず。
次回こそは〆切りを守ります。絶対に・・・とハッキリ言える自信がない。ヘタレでスマソ。
「あとがき」は大切のものだと考える。強制はしませんが、できれば皆さん書けたらいいなぁ〜と思います。口では言えないことでも、文章なら伝えられることってあるわいな。
まあ、お手紙みたいなものですよ♪
by図書神山地