第六話 嵐の予感
「まったく困りますねぇ。浮浪者の脱走はちゃんと取り締まって下さいよ?」
半蔵は軽く頭を掻きながら壁の"内側"から来た監視員を叱咤した。
「は、申し訳ありません。」
「まあ、今回は脱走者も捕まえることができましたし、不問としましょう。」
と、言いながら縄で縛りあげた先程の男を監視員に引き渡す。
「さて・・・と」
監視員が居なくなったのを見計らって、半蔵は背後に振り向く。
と、そこにはいつから居たのかオレンジの髪の少年が立っていた。
「・・・・何かあったようだ、な?」
半蔵が問い掛けると少年は頷き、口を開く。
「半蔵さん、例の奴らが動きだした。」
「!…本当か?」
「はい、連中の一人を捕えた時にそいつが漏らしました。決行は明日の正午。」
「人数は?」
「おおよそ40人。そのうち2〜3人は魔法を使えるそうです。」
それを聞き、半蔵は顔を青くしてオレンジ髪の少年の肩を掴んだ。
「まずいな・・・・・・ここ数年来の大脱走事件になるぞ!?」
「とにかく至急人数を集めて下さい。こっちもできるだけの阻止はしますから、速く人員の配備を。」
「分かった。そっちは頼むぞ、雷光!」
少年―――雷光は一度頷くとあの高さの壁を軽々と飛び越え、内側へと消えていった。
それを見て、半蔵はポケットから携帯電話を取り出してある番号をプッシュする。
「もしもし、警視庁ですか?!至急警視総監を!・・・・・・」

「・・・・う〜ん・・」
と、椿は体をよじり、眠気を覚まそうとする。どうやら、休んでる間につい眠ってしまったようだと一人ごちた。
彼女の側には、同じように歳人と明日が転がっている。
それにしても、外が騒がしい。まるで喧嘩前の不良の集会である。
あまりの騒がしさに、椿はカーテンを開けて、怒鳴ろうとした。
「あー、もう!うるさいのよあんた・・・・・・ら・・・?」
カーテンを開けた椿の眼前には、無数の武装警察や装甲車やらが
戦闘体制をとりつつある光景が広がっていた。
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