「なに・・・これ・・・・・?」
カーテンの外に広がる風景を見て、椿は唖然とした。
それは先程までとは、うってかわって、まるで違う場所に来てるかのようだった。
ガチャ、と小屋のドアを開け半蔵が入って来た。
「やぁ椿ちゃん。具合はどう?」
「え?あぁ、もう大丈夫です。それより・・・」
椿はチラっとカーテンの外へ目を配らせる。
「うん、実はその事を話しに来たんだ」
「・・・何かあったんですか?」
いつの間にか起きていた明日が問い掛ける。
「『何か』あった、と言うよりこれから『何か』起こるんだ」
「いったい何が・・・」
「それは機密事項で答えられないんだ」
間髪入れずに答えられた為、二人は何も言えなくなってしまった。
しかし、同時に事の重要さも理解出来た。
「それで、ここら近辺は危険地帯になる。君達には学校へ戻ってもらいたいんだ。もう先生には連絡してある」
「「わかりました」」
半蔵は用件を伝えると二人に背を向け、
「んじゃ、僕は仕事に戻るから、君達とは次の列車に乗ってお別れだ。またねぇ〜」
バタン、と小屋のドアが閉まり出て行った。
「これから何が起こるのかな?」
「さぁ・・な。ただ、厄介事なのは間違いない。こいつが起きる前に、さっさと準備しちまおう」
明日は未だに起きない歳人を足蹴にして言った。
正午までまだ時間はあるとは言え、雷光は焦っていた。
「くそっ・・・」
どこを調べても、40人も集まっている様子がない。
大きな建物や広場等も中に入り調べてみたが、人が溜まっていた気配は感じられなかった。
雷光が途方に暮れていたところに、携帯が鳴り出した。
携帯を開くと、そこには『如月 半蔵』の文字があった。
「雷光、何か分かったか?」
「駄目ですね。全く情報が掴めません」
そう言い切った直後に、キョロキョロと周りを警戒している若者を見つけた。
サッ、と雷光は物陰に隠れ、若者を見張った。
若者は周りに誰もいないことを確認すると、路地裏へと進んで行く。
雷光も後を追い、路地裏へと進む。
「雷光?何かあったのか?」
「怪しい人物を見つけました。追跡中です」
路地裏の奥には古びた大きな倉庫があった。
若者は倉庫の前でもう一度周りを警戒すると、中へ入って行った。
「こんなところに倉庫が・・・」
「なんだって?倉庫?」
「えぇ。怪しげな倉庫を見つけました。場所は―――――。今から中に入ってみます」
「分かった。気をつけろよ」
雷光はピッ、とボタンを押し電話を切った。
音を立てず恐る恐る真っ暗闇の倉庫の中に入る。
中には、ちょうど真ん中の辺りに大きな魔方陣が描かれていた。
雷光は一瞬で気づいた。
あの魔方陣は
だが、魔法陣に目が入り、雷光は気づけなかったのだ。
最初に尾行していた若者が雷光の前にいなかったことに。
そして倉庫には、二階があるということに。
刹那、雷光の後頭部に衝撃が走った。
雷光は倒れ、その上から何度も何度も無数の人間から雷光は打撲を受けた。
正午前、雷光の遺体が見つかった。
連絡が取れなくなり、心配した半蔵が他の偵察隊員に倉庫の場所を教えたのだ。
雷光は見るも無残な形になっていた。
魔法陣は雷光の血で消えかかり、ワープとしては使用不可能となっていた。
倉庫には約30数名の人間が残っており、確保した。
雷光が気づくのが早かった為、あまり移動出来なかったようだ。
それでも、魔法が使えると言われていた者は残ってはいなかった。