第16話 少年少女の事情
晴れた日の朝、少女はいつもより早く家を出た。
昨日の事が頭から離れない。眠れなかった。頭が少し重い。体もダルイ。
「さーくん、無事なのかなぁ・・・」
考えていた事をつい、口からこぼしてしまう。
しかし、その事すら気付かない程、椿は疲れていた。
当たり前の事だった。昨日は廃棄物の整理の補習した後、歩いて朝王学園まで帰ってきたのだ。その疲れは全く取れて無く、その上、寝ていないというマイナス要素が加算されているのだ。これが普通の少女なら倒れていてもおかしくないだろう。
だが、今日の椿には目的があった。早く"あいつ"に会いたかったのだ。
「・・・ハァ・・・ハァ」
学園に近づけば近づく程、椿は息を荒くした。立ちくらみがし、倒れそうになった。
それでも椿は足を止めず学園へと向かった。
やっとの思いで学園までたどり着く。さすがにこんなに早く学園に来る生徒はあまりいないのか、教室まで誰ともすれ違わなかった。
自分のクラス、8−Dに入ろうとドアに手をかけた時、わずかだが中に人の気配がした。
椿は「さーくんだ!」と心の中で何故か確信し、心踊りドアを開けた。だが、そこにいたのは――――――――・・・

「あ、おはよう。つばきさん」
明日だった。毎朝、規則的な生活を繰り返している明日にとって早起きはいつもの出来事。学校に一番早く来ることも別段、珍しいことじゃない。
期待してただけに、椿のショックは大きかった。
それでも、明日に心配されないよう平然を装う。
「・・・みつやくん、おはよう」
疲れた足を休める為、椿は席に座った。明日は窓際に立っているので、見上げる形になる。
「珍しいね。つばきさんがこんな時間に来るなんて」
「うん。さーくん来てるかなって・・・」
「ははは。それは無いよ!帰ってきてるとしても、あいつは遅刻ぎりぎりにやってくるね」
「フフッ。確かにそうかも」
二人は他に誰もいない空間の中で笑いあった。が、それも束の間、
「・・・・・」
「・・・・・」
二人は黙ってしまった。元々、二人が知り合ったきっかけは歳人だった。それ以来、どこへ行くも三人一緒だった。いや、歳人と二人きりという状況はあっても椿と明日が二人きりということは、ほとんど無かった。
それ故に、無言になってしまうのは仕方の無い事だった。
「・・・さーくん、どこ行ったんだろうね?先生はもう対処済みだって言ってたけど・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
思い切って静寂を破ってみたものの、明日から返答は無い。
会話が続かないので椿も黙ってしまう。
気まずい・・・つい椿はそんな事を思ってしまう。明日とは、共通の話題も無いし、何より話し掛けても返事が無いので仕方が無い。
「・・・ハァ・・・ハァ」
座っているのに息が荒くなる。今まで耐えていたものが一気に噴き出してきた。
体がつらくなり、頭がボーっとしてきた。少しずつ視界が見えなくなってきた。ふらっと体の重心がずれ、ドサッと椅子から落ちてしまう。
「!? つばきさんっ!!」
明日が椿に駆け寄る。椿の思考はそこで止まってしまった。
「さー・・・くん・・・・・」


同日、朝―――――
いつものように誰よりも早く学校に着いた少年は、自分のクラス8−Dに入る。教室には当然誰もいない。
明日はに肘を掛け、青く広い空を見つめる。誰もいない教室でその景色を見るのが好きだった。見ているだけで心が落ち着き、冷静に物事を考えられるからだ。
歳人が消えた。
一体どこに行ったのかは分からない。だが、心配してはいない。
歳人はあれでもなかなか頼りになる奴だし、推測だが―――おそらく兄貴もいるだろう。先生に歳人の事を言った時、先生は俺の事はちらちら見てた。こういう時は大抵、兄貴が関わっている時だ。何より休暇中のはずの兄貴が家にいなかったんだ。もう確定だろう。
俺が気になってるのは、歳人の事ではない。
先生だ。
何故、歳人が消えたのを知っていたのか?そして、何故どこに行ったのか分かるのか?
場所も分からないのに、兄貴を送り出すわけがない。先生は、『敷地内で起きた事は全て把握している。』と言っていた。つまり学校で起きた事は全て分かるということ。
もしかしたら―――――――
ガラッッ
勢いよく教室のドアが開いた。明日は音の鳴る方へ顔を向けた。
そこには、良く知る少女が立っていた。
「あ、おはよう。つばきさん」
何故か椿はがっくりした表情をしている。歳人がいると思ったのかな?と明日は思った。
椿は自分の席に座り、明日を見上げる形になった。
「・・・みつやくん、おはよう」
少しぐったりとしていたが、特に気にしなかった。それよりも、さっきまで考えていたことが気になる。椿には悪いが、適当に声をかけつつ、考えていた。
「珍しいね。つばきさんがこんな時間に来るなんて」
「うん。さーくん来てるかなって・・・」
やっぱり。
「ははは。それは無いよ!帰ってきてるとしても、あいつは遅刻ぎりぎりにやってくるね」
「フフッ。確かにそうかも」
二人は他に誰もいない空間の中で笑いあった。が、それも束の間、
「・・・・・」
「・・・・・」
二人は黙ってしまった。明日にとっては元々、適当に話していたので話が途絶えた事はラッキーだった。心置きなく明日は思考をめぐらせる。
途中、何か椿が言った気がするがあまりにも声が小さかった為(・・・・・・・・・・・・・)、聞き取れなかった。喋ったかどうかも分からなかったので、聞き返す必要も無いと思い明日は一人再び考えふけった。が、その時、
ドサッッ
椿が突然、椅子から落ちた。
「!? つばきさんっ!!」
慌てて明日は駆け寄り、椿を抱きかかえる。椿は息を荒げ、体がぐったりしている。赤く染まった顔に手を当てる。
「凄い熱だ・・・!! こんな状態で学校に来たのか・・・!!」
明日はすぐさま、治療系魔法を使うが効果が無い。自分では駄目だ、と判断した明日は椿を抱え、治療系魔法に長けた先生を探す為、職員室へと向かった。
「さー・・・くん・・・・・」
椿がぼそっと声を漏らす。明日にも聞こえていたが、どうすることも出来なかった。何故もっと早く気が付かなかったのか・・・、今にして後悔していた。

「んぅ・・・さぁ・・くん・・・・・」
安らかな寝息を立て、椿は慰安室のベッドで寝ていた。
明日はそれを見ると、早めに学校の帰路についた。
やはり、職員室に行くとすでに椿の治療用意は出来ていた。明日は不審に思いながらも椿の体を預けないわけにはいかなかった。
椿の治療は的確で、まだ教わっていない魔法などもあった。明日は、自分と教員達との力の差を思い切り知らされた気分だった。
家に着くと、明日は一直線で自室に入り、ベッドに仰向けに倒れた。
「・・・・・はぁ」
結局昨日から歳人が帰ってきた様子は無いし、椿まで倒れてしまった。もう頼れるのは自分しかいない。あの計画を一人で出来るだろうか?そんな事を明日は考えていた。何分か、何時間か経った後、
「・・・よし!!」
明日は決心し、ベッドから跳び下りる。そして、机の上においてあったペンダント(・・・・・)を取り、手のひらの中で見つめた。
「あの時、とっさに持ち帰ったけど、これが歳人の消えた理由に関係してるはず・・・。」
ペンダントをポケットにしまい、明日は家を出る。意外と部屋で考えていた時間が長かったのか、外はもう真っ暗だった。だが、丁度いい。今、自分がしようとしてる事は犯罪だ。夜の方がやりやすいのは間違いない。
明日は出発し、学園へと向かった・・・
あとがき

初めてあとがき書きましたよ。
さらに初めて4枚ですよ。ごめんなさいorz 〆切守れなくてごめんなさいorz
サブタイトルは・・・パ、パクッて無いっすよ!パクらせたら大したもんですよ!
・・・すいませんorz
中はッ・・ダメなのぉ・・ッ・・・ すいませんorz
ホントもうすいませんorz 生きててすいません・・とは言わないがな!!!
俺は生きます。何があっても生きます。逝きます。下ネタすいませんorz
だ が そ れ が 深 夜 ク オ リ テ ィ !
では、最後に次の人へ一言・・・『乙ッ!!』
by絶望君