「ま、潜入すること事態は簡単なんだよなっ・・・と。」
歳人、椿、明日の3人はアウトローラインの壁の上から重力制御の魔法を使い、ラインの内側にと入った。
「さて、と。こっからが本番か。椿さん、歳人、体調は?」
「OK。100%の力で戦えるわ。」
「いつでもいけるぜ。」
明日の問いかけに2人は自信をもって答える。
「けど、問題は無神を空の泉がどこにいるかなんだよな?」
歳人が明日に質問する。
「うーん、そこが問題なんだよね。心あたりをいったら前の廃墟ぐらいかな?」
「初めっから手詰まりってわけね・・・」
思わずため息をつく椿。その時だった。
不意に3人の足元がゆれた。
「地震!?」
「いや、ちがう!」
3人の前方で、地下から"何か"がせり出してきたのだ。
「偽装シャッター、オープン。システムに異常なし。空の泉への魔力供給は30分後に実行。」
地下に秘密裏に建造されていた建物。その中で、無神らは勝ち誇った笑みでいた。
「いよいよだな。無神?」
「ああ、全てはこれからだ。この塔と空の泉。2つの機能によってこの腐敗した世界を一掃できる。」
空の泉。それは雨を作りだす魔力の結合体である。しかし、この空の泉にも一つだけ欠点があった。それは、魔力の効果が平面上にしか広がらないということだった。つまり、使用した面の下に雨をふらせるということである。だから、無神らは空の泉を高い所で使用するためにこの建物を密かに建造していたのである。
「全システムオンライン。最終チェック完了。無神様、いつでもいけます。」
システムを管理していたミラが無神をうながす。
「起動トリガーを私に回せ。この世界を壊すのは私がやる。」
ヴィオがさしだしたスイッチをうけとり、無神は勝利の笑みをもう一度うかべた。
「さあ世界よ、驚愕するがいい!神を否定した者が神となるこの時を!」
無神がスイッチをおしこむ。一瞬の静寂の後、建物が振動する。
「"空の柱"起動―――!!」
地下から巨大な物体がせりだしてくるのは地上にいる3人の目にも確認できた。
「歳人、あれは!」
「まちがいない、無神はあそこにいる!」
彼らは確信した。無神と空の泉はあそこにあると。
「空の泉の特性――平面上のみの効果を考えると、あの建造物のいちばん上だ!行こう、明日、椿!」
「うん、行くよ、歳人!」
「あんたが指図しなくっても!」
3人は駆け出した。最後の戦いの地へ。
「南出入り口に熱紋!これは・・・人間です!」
管制をまかさえていたヴィオが報告する。無神は一瞬の思案ののち、命を下す。
「ミラ、ヴィオ、教授。3人はすぐさまそいつらを始末しろ。」
「無神様、それでは・・・・」
「私の安全などどうでもよい!私の身を案ずるなら・・・・早く3人を殺すのだ。いいな!」
無神の一喝。
「は、はい!行って参ります!」
3人が退出する。空の柱の中核には、無神のみが残った。
「歳人、私と貴様、どちらが正しいか勝負だ!」
「しかし、いったいいつからこんなバカでかいもの作ってたの!?」
歳人ら3人は、ようやく空の柱の内部に侵入していた。
(無神は初めて会った時からこの国を消すって言ってたな・・・・。ってすると、俺たちが生まれる前から作っていたんだろうな・・・・。)
と、歳人が思案していると3人の目の前には3つの分岐点があった。
「・・・・あからさますぎよね・・・・」
と、椿は右の道に入っていく。
「それでも、やるしかありませんよ、これは。」
と明日は左へ。
「2人とも、死ぬなよ!」
歳人は正面の道を駆ける。
決戦の蓋が、今切られた。
第33話 空の柱
by通常の3/1倍