第六話 白き月
翌の朝。
決して清清しい朝ではないが、どうやら、目が覚めたようだ。
隣のベッドではイージスがまだ寝息をたてている。
ふと、時計のほうへ目をやる。・・・10時か・・。
普段なら比較的早い時間に起きるはずの黒乃だったが、前日の疲れもあってか、随分と寝てしまったようだ。
こんな時間まで寝ていたのに基地の連中がイージスの身体検査をしていないのはなぜだろうか・・
やはり起きていて活動していたほうが都合がいいのかな・・?
「う・・。ん・・・」
そんなことを少しばかり考えているとイージスがごろんと寝返りをうった。
そしてゆっくり目を開きながらこちらを見た。
「おはよう、イージス」
「え・・あ・・うん・・・、おはよぉ・・」
まぁ随分と眠そうだ、まだ寝足りないのか・・
「そうだな、朝飯でも食べに行くか?」
「あ・・うん・・」
俺は寝ぼけ眼のイージスを起こし、食料庫へと連れて行く。
食料庫は一度に大量の物を入れておくと1つがだめになったとき全部がだめになってしまうので、各階に分けられて設置されている。
置いてある物は、大体即席スープや缶詰、パンや牛乳もある。
これらの物は月に2度ほど運ばれてくるのであまり品質に問題はないだろう。
俺はまず、入り口付近にある電子コンロでヤカンに火をかけ、庫からパンとスープの素を取り出し、イージスに渡す。
「まぁ、これが食事だ。味はそこまで悪くないぞ」
イージスはパンを取り出しもふもふと食べ始める。
なんだ、普通に物も食えるのか。・・当たり前か、こいつは生物兵器でも一応生物か・・
どう見ても普通の少女にしか見えないその姿を見て考えるのをやめた。
どうやらヤカンの湯が沸いたようなので、カップを取り出し、湯を注ぐ。
「ほら、それを入れな」
と言うのは良いが、なかなかスープの素の袋が空かないらしい。
「やってー」
なんだ、案外不器用なんだな・・
俺は袋を開けて中身を湯に入れてかき混ぜてやる。
「ほら、できたぞ」
「ありがと」
実は俺はここのスープが好きだったりする。塩っぽいものが好きだし、栄養も一応入っているという、なかなかの良い物だ。

と、入り口のドアが開く、そこにいたのは渚だった。
「あら、黒乃にしては珍しく遅いのね」
「そうだな、やっぱ昨日の疲れもあるからな」
「奇遇ね、私もそんな感じだったわ」
疲れもあるのだが、なんかイージスから眠気のオーラみたいな物が・・
まさかそれを利用して相手を眠らせてしまうとかそういうのが・・・ないか。
「そう、あと、イージスちゃん、11時から検査って言われてたわ」
それを聞いて、頷いたのかどうかわからないが下の方を向いてしまった、表情が少し暗いのがわかる。 やっぱり怖いのかな・・
すると渚がイージスの頭をなでながら
「よしよし、怖いだろうけどちょっと我慢しててね、すぐ終わるから大丈夫よ」
と、イージスをなだめる。
なんていうか、こう、お姉さんみたいだ
まぁ、それはそうか、一応年上なんだし・・。
それからしばらくして、朝飯を平らげ、俺と渚はイージスを昨日の、「なんかいろんな機械のある部屋」に連れて行くことにした。
「大丈夫だから、がんばってね」
と、渚が言い、イージスは部屋へと入って行った。
さて、安心できるわけではないが、実は結構暇になってしまった。
するとそこへ
「お、よーっす、2人とも」
あぁ、暇人一号が現れた・・、ちなみに俺は一号でもなんでもないぞ?
「なんだ、イージスの検査かなんかか?」
「あぁ、そのとおりさ」
「あんまりストレスを与えるといけないからって、すぐ終わらせるらしいわ」
なるほど、だったら大丈夫だな、ここらへんで待っていればそのうち出てくるだろう。

「敵襲!地下1階に不審な生体エネルギーを感知!」
いきなりうるさいブザー音とともに敵襲を知らせるアナウンスが鳴り響いた。
ここがばれるなんて言うことがあるのだろうか・・
とりあえず、地下1階へと上がらなければならない。
武器は基本手放さないのでとりにいく必要など無かった。
「うーん、どんなんだろうね・・」
エレベーターで不安そうに渚が言う。
こんなところを見つけてしまうのだから並大抵のやつではないだろう。
「大丈夫だろ、皆もいるんだし」
と、七翔が答える。 この野郎は人に任せるつもりなのか・・?
エレベーターが地下1階へと到着する。
そこにいた「敵」を見て目を疑った。
そこにいたのは「少女」だった。そう、イージスと同じような、少女が。
長い白銀の髪に淡く青い眼で、その容姿には似合わない、黒いコートを着ている。身長はイージスより少し上と言った感じだろうか。
少女はこちらを向くと、口先一番に言った。
「プロトタイプを取り戻しに来た。道を空けなさい」
その声は透き通るような声だが、強い口調だった。
このままではいけない、とっさに取り出した銃を向けた、が、相手は少女だ、撃つようなマネは・・。
と、そこまで考えたところで、持っていた銃が炸裂した。
「な、何だって・・!」
「道を空けなさいと言ったはず」
やばい、こいつはどこかおかしいぞ、こんなやつを通すわけには・・・
ドン!!
地鳴りがした、なんだ、地震か?それにしてはでかい音だった
「え・・なんで、まさか・・」
少女がぶつぶつ呟いている。
「ちっ、しょうがない、ここは・・」
すると少女が姿を消した、どんな原理かわからないが、こんなこともできてしまうのか・・。

少しするとイージスがこんなところまでぱたぱたと走ってきた。
「はぁ、はぁ・・あの子が、きたの・・」
「大丈夫か!あの子って言うのは誰だ?知っているやつか?」
「No.001・・・アルテミス・・」
何だって・・1号だと、こいつの他にも生物兵器がもうすでに作られているって言うのか・・・。
イージスは疲れきっている様子だった。
「黒乃さん、その子の検査結果が・・」
先ほどまで部屋にいた検査員だ、何か重大な発見でもあったのだろうか。
「その子は・・兵器としての要素を何も持っていなかったんです」
・後書き
現在AM5時をお知らせいたします。
長くなった・・かな、印刷してみなきゃわからんのだが・・
題名っているんだっけ。
とりあえずおやすみなさい。
byあげ