ここは深い森の中、何台もの車が先頭についていく形で進んでいく。車は大型のトレーラーや小型の車まで様々である。
今の時刻は午前5時まだ朝日には早い時間。そんな中の大移動である。
昨晩・・・
共和国との戦闘でアルテミスを取られてしまった。それは、敵に自分たちの位置を教えてしまったことになる。
自分たちはテロリスト。何処に居るかばれてしまったら終わりだ。同じところに居ては殺してくださいと言っているのと同じだ。
だから、敵に自分たちの居るところが知られた以上、拠点を変えなくてはならないのだ。
拠点の移動といっても、本部内にあったものを全て持っていくわけにはいかない。だから、活動に必要な最低限の装備で移動しなければいけない。私物はもちろん、大掛かりな検査具や戦闘で死んだ兵の遺体も・・・。
そして出発の際、本部は爆破してきた。発つ鳥跡を濁さず。そこに居た証拠などを隠滅するのにこれが一番確実なのだ。
しかし、装備を最低限にしてしまった為、もし今攻め込まれてしまったらたぶん全滅である。だから、車のライトは数台ごとに点灯させなるべく光を減らし、強襲に備えて車の車間を開けて走行した。
今我々が向かっているのは、“ターミナル”日本支部の本部から離れたところにある新潟基地。新東京からは300kmもあるが、他に行くところがない。長いたびになるが仕方がないだろう。向こうに行けば本部に比べれば設備が悪いが、今の状況よりかははるかに良いだろう。
新潟基地に向かうトラックの中には黒乃達三人が居た。
昨晩の戦闘で傷ついた渚が毛布をはおりながら壁際に横になって寝ている。その体には治療されたのか、包帯やガーゼが何箇所にも施されている。
その横にはセレネも寄り添うように寝ている。
黒乃と七翔の二人は反対側の壁にもたれるように座っている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人の間には沈黙続いている。今にも破裂しそうなピリピリとした緊張感の中。
緊張感の原因は、共和国にいつ強襲が来るかわからない不安感もあるが一番の原因は、昨夜の戦闘でのアルテミス保護の失敗である。
お互い、別にいがみ合っている訳ではないが、黒乃は前線に居ながらもアルテミスの奪還を許してしまったことに対する責任感。七翔はその最前線にも立たせてもらえなかった自己の無力さ。
戦闘が終了して、黒乃達が本部に帰ってきて作戦の結果を報告してすぐに二人は言い争いになった。
「お前最前線に居たのに何で連れてかれんだよ!あの子は俺たちが捕獲したって言うのに、簡単に奪還されやがって!」
「なんだよ、捕獲って!あの子は生物兵器でも人なんだぞ?そんな実験動物みたいな言い方やめろ!それにお前はその最前線にも立たせてもらえたかったのに文句言ってんじゃねえよ!」
胸ぐらを掴み合い、顔は今にも付きそうなくらい近づいている。二人が拳を後ろに振りかぶり殴りかかりそうになったとき、
「お前ら何してる!今すぐここを捨てて新潟(基地)に行くぞ!」
その村松の一言で二人は離れて、それぞれ支度をし始めた。
ここまでが今の状況の説明である。って私は一体誰に話してるんだか。
本当は二人の仲裁に入りたいところなのだけど、それが出来る空気でもない。そんな訳で寝ているフリなのだが・・・。
二人は一向に話そうとしないし、このままじゃ二人とも向こう(新潟)に着いたら離れ離れになりそう。基地が変われば、その基地にあった役職に変更されるのはよくあることだ、こんな二人じゃあそれもありえる。
・・・どうしよう。
「あのさ・・・」「なあ・・・」
お!二人に変化あり。このまま仲直りするのか?
私はこの時そう思った。
けど・・・
ドーン!!!
戦闘のほうから空気が揺れるのがわかるくらいの大きな爆発音がした。
それに合わせて毛布をどけ私は起き上がった。
「何があった?!」
黒乃がすぐさま運転席のほうに行き無線に耳を傾け状況報告を待った。
『全車両に通達。現在列の後方にて爆発がありました。その影響で崖が崩れてきて何台かの車両が下敷きになった模様。おそらく敵からの奇襲と考えられる。しかし、今の軍備では戦闘は厳しいので無事だった車両はすぐさま敵に応戦しつつ逃げ・・・・ぎゃー!・・プツン』
ドーン!!!
通信の途絶えるのと同時に後方でまた爆発音がした。
「くそ!七翔!渚!戦闘準備。後方に攻撃の視野を向けながら急いで基地に向かうぞ!」
「OK。了解した」
どうやら二人とも、この緊急事態でいつも通りに戻ったみたいだ。
「うん。わかったわ」
各々準備が出来、トラックの荷台を開ける。
第拾参話 夜明けまえ
あとがき
どうもです。なんか少し滞納していまい申し訳なかとです。
本当はもう少し早く出すつもりだったのですが眠気に負けてしまい、このままではめちゃくちゃになりかねないので、遅くなりました。
どうもです。なんか少し滞納していまい申し訳なかとです。
本当はもう少し早く出すつもりだったのですが眠気に負けてしまい、このままではめちゃくちゃになりかねないので、遅くなりました。
by鱈の弧