「なぜ私を助けた?」
開口一番、アルテミスは俺に尋ねた。
あの作戦から三日。部屋でおやじの一言にずっと考えさせられていた俺に、アルテミスの意識が戻ったという知らせが入ったのはつい先ほどのことだった。
知らせを受けた俺はすぐに部屋を出、アルテミスと面しているのである。
「何だ?」
「だから聞いているんだ、何で私を助けたと。」
マンガみたいな事をいいやがる。
あの時、本当の予定は爆破で弱った二人を殺す予定だった。が、俺たち三人は極力反対。
あの頑固なおやじと凄絶な押し問答を繰り広げ、最終的には渚が「この子を殺すくらいなら私も死んだ方がマシ!」とまでいいだす始末で結局はおやじのほうが折れてくれた。
最後に、おやじは俺たちに「おまえらも甘くなったな」と言い残した。
だが、俺はそれでもかまわない。たとえ生物兵器だろうが何だろうが、もう子供の命を奪うのはいやだった。
それが、本心。
と、まあ説明しておいた。
それだけでアルテミスは理解したようだった。が、まだ解せないらしくしきりと
俺の真意を探ろうとしているのか黙したままである。
「でも・・・・」
「?」
「でも、どうせお前たちも私を利用あげくには処分するつもりだろう。ならいっそ・・・」
刹那、今まで堪えていた感情が外部に一気に噴出した。
次の瞬間には、俺の張り手がアルテミスのほほを思い切り叩いていた。
「この馬鹿野郎っ!」
アルテミスは呆然とこちらを眺めている。赤くなったほほを押さえようともせず、ただこちらの言葉を待っているようにも見えた。
「お前は一生道具のような生き方をしたいのか!?違うだろが!ホントは自由に生きたいんだろうが!」
アルテミスの目から涙がこぼれ、布団を濡らす。
「どうなんだよ、生きたいのかよ!この前のような強気なお前はなんだったんだよ!答えろアルテミス!!」
しばしの沈黙。
無限ともいえる時間の果てに、アルテミスの口から嗚咽が漏れる。
「生きたい・・・私も、自由に生きたい!」
それは生物兵器として生きてきた少女が隠してきた本音だった。
先ほどまでの大人びた雰囲気はもはや消えうせ、そこには年相応の少女がいた。
俺はアルテミスの頭をそっとなでてやる。
「大丈夫だ、俺がお前たちを解放してやる・・・絶対にだ。」
白い病室には、ただアルテミスの泣き声のみが響き渡った。
もう、これ以上悲しい子供は作らせない。東アジア共和国、絶対に・・・・・・・・
ツブシテヤル。
「お姉ちゃん、私まちがってた・・・」
「でしょ?」
私とセレネは、黒乃が病室に入るときから後をつけて密かに中の様子を伺っていた。
ちょっと前、セレネの様子がおかしかったから相談にのってあげた。セレネいわく、私たちのことがどうやら信頼できなくなってしまったらしい。
ごめんね。謝っても許されないよね。私たちはセレネにひどいことしたよね。
セレネはアルテミスのこともしきりに尋ねてきた。本当に心配なんだね……。
「大丈夫、絶対黒乃が止めてくれるから。」
「でもぉ、もしも・・・」
はあぁああああぁぁぁああ・・・・・
思わず口から盛大にため息がもれる。
「じゃ、たしかめてみる?」
「・・・・・・?」
「黒乃の心を、さ。ついてきなさい。」
とまあ、これが三時間前の話。
「私たちもね、あなた達と変わらない兵器のようなもの。ただ、私達は誰かに命令されてここにいる訳じゃない。自分の意志でここにいる。」
セレネは黙っている。が、自分が渚たちを誤解していたというのはわかったようだ。
「ごめんなさぁい」
「いいのいいの。むしろそのセリフは私達のリーダーが言うべきなんだから。」
セレネの頭を撫でてやる。
「さ、おなかすいたでしょ。何か…といってもいつものやつしかないか。食べにいこ?」
「うん!」
私とセレネは病室の前を後にした。
病室の中からは、アルテミスの泣き声はもう聞こえなかった。
「……で、またお前だけいい思いをしているのかよコラ。」
アルテミスちゃんの様子が回復したというので様子を見に(好感度上げに)来たら、また黒乃のヤツが先をこしてやがった。セレネの時といいなんでこいつだけ幼女にモテるんだよ!?しかも腕枕。その上でアルテミスちゃんがぐっすりと寝ている。アア羨ましい羨ましい。
「なんの事だ?」
ナンダコノヤロー。アルテミスちゃんに腕枕だと?七翔さま差し置いて腕枕たぁいいご身分じゃねーか。
「うるさいだまれロリコン、アルテミスが起きるだろが。」
なんだと!?男冥利に尽きるってやつじゃねーのかおいてめ黒乃!なにシカトぶっこいてやがる!
「いや………おまえがあまりにも幸せなもんでな。」
いやがらせか、おい。
「七翔。お前は今の環境自由だと思うか?」
なんだよ………急に。
「自由じゃないのか?それなりに。俺様は今の所不自由はしてないし、なによりもお前らと行動している時が一番開放されるんだが、な。まあ自由だろ。」
「臭いやつだよ、お前は。」
あってめえ今のは聞き捨てなんねえぞコラ!今のは結構マジでぶっちゃけたんだからな!って何が可笑しいんだよお前はぁぁぁぁぁぁぁ!
そして、三時間後。
「東アジア本国内で政権争い?」
俺、七翔、渚、セレネはアルテミスから東アジア国内の異変について話を聞いていた。
もっとも真面目に聞いているのは俺と渚だけで、七翔とセレネは睡魔の虜になっていた。
「うん。詳しいことはわからないけど、いつまでテロリストを台頭させているんだって言うグループの主導者が裏で工作をしてたってかなりの騒ぎになっているんだ。」
つまり、テロ殲滅主義者のリーダーが選挙で他の実力者を脅したり裏金を渡したりしていたという事実が外部に洩れ、国会が大混乱になっているらしい。…………て、まてよ。
テロ殲滅主義者のリーダーって、たしか……
「テロ殲滅主義者のリーダーはチョン・ハン首相だよな……っておおぃ!?」
七翔がびっくりしたように叫ぶ。七翔、ここは病室だ……て、それどころじゃないぞ!
「バカな。チョン首相といえば極度の潔癖症で有名で、賄賂をしようとした議員に青竜刀で切りつけようとしたっていう話もあるくらいの人物だ。……何かあったな。」
「私もそれ以上のことは教えてもらえなかった。ただそのせいで今、生物兵器の研究も一時的にストップしているらしい。研究施設もてんわやんわになっている。」
…………当面の作戦は決まったも同然だな。渚、リーダーに大至急連絡を。
「OK、すぐにやるわ。」
「七翔は武器の手配と携帯食の仕度を……後セレネを起こしてやってくれ。」
「へいへい。」
と、俺自身も仕度を始めようと席を立つ。が、誰かが袖を引く。…………アルテミス?
「………研究施設には仲間がまだ眠っているんだ、助けて…ほしい。」
任務追加、だな。ただ………
「場合によってはだが、最悪の事態も想定していてくれ。」
「っ……!」
明らかにショックを受けていることがはた目でもわかる。アルテミスは寝ていたベッドから身を起こそうとするが、明らかに苦痛で顔が歪んでいる。
「わ、私も行く!私が説得すればあるいは………ぅぐっ!」
「無理をするな!今の状態ではむざむざやられに行くような物だ!」
アルテミスは無念そうにベッドに横になる。最後に、アルテミスはこちらの手を握り懇願するようにこちらを見上げた。
「セレネを……頼む。」
「………………」
「あの子は、私の始めての友達なんだ!守ってやってほしい……!」
そうか。アルテミスもまたセレネと同じく、仲間想いな子なのか。
「たしかに頼まれた。」
そう言って病室を後にする。
俺にとって、新たなる戦いの幕開けだった。
第拾九話 消えよ戒め
あとがき
長くなってしまいました。それにアルテミスが裏切り臭い…………
そこらへんに物凄く反省しつつ、あとがきです。
始めはアルテミスは死んで、黒乃の葛藤を書こうとしたのですがあまりに文と描写がダメ過ぎたので準仲間という形にしました。コ゛メンナサイ。では、次の話にこうご期待あれ!
え、村松の出番がない?いいよ別にあのバーコードハゲてうわなんだ貴様なにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
長くなってしまいました。それにアルテミスが裏切り臭い…………
そこらへんに物凄く反省しつつ、あとがきです。
始めはアルテミスは死んで、黒乃の葛藤を書こうとしたのですがあまりに文と描写がダメ過ぎたので準仲間という形にしました。コ゛メンナサイ。では、次の話にこうご期待あれ!
え、村松の出番がない?いいよ別にあのバーコードハゲてうわなんだ貴様なにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
byキング