第弐拾四話 一マス戻る
親父をこの世から追放する。彼はそういった。
だがそれなのにホームへ戻るとはどういったいきさつなのだろうか。
守る事が任務、だが、防戦一手では勝ち目が見出せない。
彼は、何をするつもりなのだろうか。本当に言っている事に矛盾の多いやつだ。
考えれば考えるほど、話せば話すほど、そこに居ればそこに居るほど、信用していいのかわからなくなってくる。
親父のところへ行くよりも生存率が上がった事は確かだ。だがしかし、それだけでいいのだろうか。何か重大な事を忘れているような気がしてならない・・。
疑問が渦巻く。思考を阻害する。疑いが濃く染まる。信用が薄れる。

真薙がこちらを窺い、何か言っている。手招きをしているのだろうか。
何だ、お前は、俺をどこへ連れて行くつもりだ・・・。

「どうしたのよ、黒乃。顔色悪いみたいだけど・・?」
視界に渚が現れる。
「さっきからぼーっとして、どうしたんだ?」
七翔が問いかけてくる。
「もう着いたぞ。早く降りてきたらどうだ」
あぁ、真薙がさっきからしゃべっていたのはこういうことか。

ホームに到着するまでに、さほど時間はかからなかった。
京都支部から車を走らせる事1時間。明確な場所はわからないが、おそらく西へ向かって走っていたのだと思う。
ホームと呼ばれたそこには、ターミナルの施設のような立派な建物ではなく、比較的小さな小屋のようなところだった。
中にはいってみると窓はなく、蛍光灯の光が部屋を照らしている。
「ここへ呼んだのは他でもない。矛から身を守るためには盾が必要だろう?」
こいつに矛と盾について説明されてもいまいち納得が行かないが、要はここが身を守るための施設らしい。
「どうだね、茶でも飲むかい。」
そう言って真薙は隅にあるコンロでヤカンに火をかける。
「・・で、では、いただきます」
俺は訝しげに答えて見る。
「大丈夫だ、余計な心配はしないでいいよ。」
真薙が言ってみせるが、
「は、はぁ・・」
返す言葉も特になく、中途半端な返事をする。
「さて、これからの方針を言っておこうか・・」
と、真薙が短い沈黙を破る。
「まず、その生物兵器たちについてだが・・、生物兵器は生物兵器同士を戦わせることを想定して作っているわけじゃないと言う事はわかるね。その子達はあくまでも、対生物用の生物でかつ、兵器であるという意味で、生物兵器と呼ばれているのだからね。」
なるほど、言われて見ればその通りだ、というか、当たり前か。
「となると、どちらかというと効率を取らざるを得ないというのは、わかるよね?対生物なのだからより多くを相手にできたほうが都合がいい。それが単純な強さかというとそうではない。1:1の戦闘に長けていたほうが生物兵器同士の場合、有利なんだよ。」
そして、それでいう、劣っている方というのが、この捨てられた4人・・。
「でもなんで、この子達をそのまま逃がすようなマネを?普通はそこで消したりするはずじゃないのか?
「それについてだが、そこまで深追いするような必要はなかったのだろう、どうせ反撃したところであちらには生物兵器同士の戦闘でなら絶対の実力があるわけだし。」
要は、向こうの方が効率、1:1での戦闘共に優位にあるということだな。
難しい、そんなものに果たして勝てるのだろうか。最低でも、守りきる事はできるのだろうか・・。

「まぁ、着いたぞ。」
着いた?どこへ?というかもてなしの茶はどこへいったんだ。

そこにあったのはターミナルどの支部よりも大きいだろう、巨大な地下基地だった。
なるほど、さっきの小屋が入り口でエレベーターだったのか。

「ここがわれわれのホームだ。」
「そうそう、君達の部屋もあるから安心してくれ。」と付け足す。
そのまま俺達は自分達の部屋に案内された。
「突然で悪いが、セレネ達をいったん預かるぞ。」
真薙が言う。反論する理由はないのだが。また疑ってしまう。
「いったい何をするんですか?」
渚が聞いた。
「少しだね、この子たちの状態を見るのと、強化の準備だよ。」
強化だと、これまでしてさらにこの子たちを苦しめるのか・・。
「大丈夫だ、安心しろ、ここには腕利きの俺の部下達がいる。」
といわれてもいまいち信用ができない。信じていいのだろうか。
「その子達にもしもの事があったら・・・」
「大丈夫だといっているだろう、そんな目でにらむなよ黒乃君」
「・・・わかった」
「黒乃・・」
渚と七翔がこちらを窺う。が
「大丈夫だ。俺達は部屋で少し休もう。」
そう言うと各自部屋に入りつかの間の休息をとった。
あとがき
眠い。ただいま5時13分でございます。
書けじゃなくて書くんだよなぁ。普通に。
とりあえず、人がいる分矛盾が生まれるのだろうが、一人で矛盾を突っ走る真薙氏はその法則に乗っているとは思えなかったりしたり。
まぁなんだ、変な事をなくさぬよう。見落としのないように読む、もしくは、無難な発言で地雷を踏まないようにすれば、なんとかなるはずだ。
まぁ、悪コンディションでは無理に書かないほうがいいというのがわかった。
まぁ「悪コンディションになる前に書けばいい」わけでもあるがねぇ。
次の方、よろです。
byあげ