第弐拾七話 黒と白のセット
「……では、頼んだぞ。」
通路の曲がり角、姿は見えないが奥の方から話し声が聞こえる。
この声は…真薙?
角を曲がると、話が終わったのか、若い男が通り過ぎた。
「どうかしたんですか?」
「おや、黒乃君。」
この男、真薙総冶。
テロ支援組織“ターミナル”京都支部支部長にして親父の実子。俺達の命の恩人にして、新しいリーダー。
だが、今ひとつ信用性に欠ける。この基地に着いてから何日か経つが、未だにこいつが何を考えているのか分からない。
「実はね、研究所らしき建物を発見したという情報が入ったんだ。」
「研究所?」
「あぁ。もしかしたら、生物兵器の研究が行われていたのかもしれない。それを調べてもらう為に部隊を派遣したんだ。」
なるほど。さっきの男はその部隊の隊長ってとこか。
だが、それなら……
「俺も行きます。生物兵器がもし現れる可能性があるなら、戦った事のある自分が適任だと思います。」
「確かにそうだね。だったら、七翔君や渚君も連れていったらどうだ?」
「いえ、目的が調査だけなら、そんなに人数はいらないでしょう。それに多人数だとバレる可能性がある。」
それもあるが、この男の下にセレネ達を置いて行くのは気が進まない。誰かが残っていた方がいいだろう。
「そうだな。では、君を含めた四人一組のチームで行ってもらう。では、今すぐ準備をして出発してくれ。」
「分かりました。」


真薙と分かれた俺は、部屋で準備をしていた。
「あん?黒乃どっか行くのか?」
「あぁ。研究所らしき建物が見つかったらしい。それを調べに行く。」
そう言いながら俺はチラっとベッドを盗み見る。
渚とセレネが安らかな寝息を立て、寝ている。
セレネが起きてたら、「一緒に行く」なんて事も言い出したかもしれない。
寝ていたのはタイミングが良かった。
そうこうしてる内に準備が整い、立ち上がる。
俺はもう一度ベッドを見た。今度はしっかりと。
「七翔。彼女達を任せたぞ。」
「はぁ?何言ってんだ、お前?お前がさっさと帰ってきて自分で守ればいいだろうが」
「フッ、確かにその通りだな。じゃあ行ってくる。」
俺は部屋から出て、エレベーターまで走って行った。
「……くろの………行っちゃ…だめ……」
少女の寝言は俺には届かなかった。


「どうも。この任務のリーダーである、白波瀬です。よろしくお願い致します。」
「黒乃だ、よろしく。」
すでに基地から離れ、俺達は怪しまれない様、武装された乗り物ではなく普通の一般車で移動していた。
とはいえ、多少は撃たれても問題の無い仕様ではあるが。
6人乗りのこの車には、俺を含め4人乗っている運転席に一人、助手席に一人、後部座席に俺と白波瀬が乗っている。
一番後ろには、外から見えない様に武器や探査機等が敷き詰められている。
「今回の任務は、あくまで調査のみ。敵の見張りが固いようなら、無理に侵入せず様子を見張る。異論は無いですね?」
「あぁ。問題無い」
「では、これを」
渡されたのは無線機と……銃、か?
「何だ?この妙な形の銃は?」
「これは、京都支部で極秘に製作していた電撃光線銃です。
 数日前にやっと試作機が完成したばかりなので2丁しか無いのですが、その内1丁をあなたに」
「何故俺に?」
「もしも、の時の為だそうです。この中でまともに戦えるのはあなただけですから」
もしも…か。そんな事無ければいいんだがな。
大体、こんな銃で勝てるとも思えない。
「さっき電撃光線銃と言ったが、具体的な性能は?」
「はい。この銃の中には、電気が溜められてます。それを圧縮し、光線として対象物に射出する。それがこの銃の攻撃の仕方なのですが、光線と言ってもレーザーというわけではなく、
 実際には物を貫通する程の威力は持っていません。
 相手が生物であれば、その電撃を食らい気絶する程度です。
 殺傷力は銃に劣りますが、対象物に当たるまでの速さではこちらの方が上です。」
「だが、この銃に大量の電気を溜める為の大きなバッテリーがあるとは思えないが?」
「その通りです。携帯性を重視した為、バッテリーは小さいんです。撃てて1発と言ったところでしょうか。」
「充電にはどのくらいの時間がかかる?」
「ハッキリとは分かりませんが、基地の特殊充電装置で2時間程でしょうか。」
つまり、基地にいない今、たった一度しか使えないという事か。
まぁ無いよりはマシ、か?
銃弾よりも早くても、生物兵器の子供達にまともに撃って当たるとは思えないが…。
「私の不可視光線よりも全然使えなさそうね。」
なっ―!?
突然、背後から聞こえる少女の声に車に乗ってる誰もが驚いた。
「アルテミス!?なんでここに!?」
俺の声に呼応するように、ひょこっと顔を出す。
「これから研究所に行くんでしょ?もしかしたら生物兵器の子がいるかもしれない。
 そんな危険なところにあなたを行かせられないわ。」
「…どこで研究所の話を聞いた?」
「あなたとあの真薙とかいう男が話してるのを聞いた。」
あの時か…っ!!
だが、もう今から戻るには遅すぎる。
「白波瀬さん。真薙さんにアルテミスが一緒にいる事を伝えてくれ。
 それとアルテミス、この任務はあくまでも調査だけだ。何もするなよ?」
「分かってる。あなたに危害が無いなら何もしない。」
はぁ、まぁ特に何も無いんだったらいいんだがな。


「ここで待ってろアルテミス。いいな?」
「えぇ」
アルテミスを車の中に残し、俺達は車から降りる。
「よし。二手に別れよう。僕と黒乃が建物を調べる。君達はここでアルテミスの警護に当たってくれ」
「了解」
すぐさま行動し、俺と白波瀬は入り口が見える位置で隠れて様子を伺う。
5分程見ていたが、警備員が現れる様子も無く近付いてみる。
だが、人の気配がする事など皆無で、時間だけがただ過ぎる。
「どういうことだ?誰もいないのか?」
「そんな事は無いはずだが……。黒乃、進入してみよう」
白波瀬の提案に黙って頷き、入り口にセンサーが無いか調べる。
こ、これは……!?
「白波瀬さん、ちょっと来てくれ!」
「どうした?」
「センサーが壊れている。いや、壊されている。」
センサーらしき物は、ただのガタクタの様になり、地面に転がっていた。
どういうことだ?中は一体どうなっているんだ?
ドアの取っ手を掴み、注意しつつ一気に開けた。
「……なんだ、これ……っ!?」
「……血、か?」
扉を開けたその中は、まさに惨劇が起きていた。
地面や壁の至るところに血が付着しており、生臭い血の匂いが充満している。
中に入り、調べてみる。血はすでに乾いており、ここで惨劇が起こったのは数日も前の話のようだ。
この血の量で死体が無い事から、おそらくすでに共和国の人間が始末したのだろう。
つまり、ここにはもう役に立つ物は何も無いって事だ。
「白波瀬さん」
「あぁ。どうやらすでに、もぬけの殻のようだな。任務終了、帰還しよう。」
しかし、一体何があったんだ?この状態はただ事では無い。
俺と白波瀬が建物から出た瞬間、無線から声が聞こえた。
「こ…ち………発見………………」
「こちら白波瀬。どうした?電波が悪くて聞こえない。」
「……生物…………襲……」
プツン
電波が途絶え、無線から何も聞こえなくなる。
俺と白波瀬は顔を見合わせた。
「何かがあったんだ!白波瀬さん、急げっ!」
「分かってる!!」
「くそっ!!」
こんな事になるんだったら俺が残っておけば良かった!
とにかく早く行かなければっ!!


「はぁ、はぁ、はぁ……」
車を置いた場所まで戻ると、そこにはぐしゃぐしゃになっている車と無残な死体が2つあった。
腕や足が切断され、片方の男は頭が吹っ飛んでいる。
「くそっ!くそっ!アルテミスはどこだっ!?」
「黒乃っ!!」
白波瀬に呼ばれ、後ろを向くと彼は指を指していた。
指された方向を見ると、ボロボロのアルテミスが白髪を持つ少女を前にして何とか立っていた。
「あの子は、あの時親父と一緒にいた……っ!!」
「黒乃。僕が囮になって注意をそらすから、その間にアルテミスを連れて逃げろ」
「……何だって?それじゃアンタは…!?駄目だ、3人で逃げる!」
「黒乃っ!!リーダーは僕だ!命令には従ってもらう!」
「だが……っ!」
「…黒乃、君の気持ちは嬉しいが、これ以外に手は無い。君の本来の任務は、彼女達を守る事だろ?自分の使命を果たすんだ。」
「………分かった。」
白波瀬は俺の言葉を聞くと、煙玉を二人に向かって投げた。


突然、辺り一面が煙に包まれた。
「こ、これは……!?」
私は突然の事態に対処出来なく、煙の中立っていた。
そこへ黒い影が近付いてくる。
くそっ……またあの攻撃が来るっ!!なら、先に撃って……!
「アルテミスっ!!!」
「え!?」
煙の中から現れたのは、白髪の少女では無く黒乃だった。
かざしていた両手を下げようとした時、片腕を黒乃に掴まれる。
「逃げるぞっ!走れ!!」
「え…あ…分かった!」
煙が晴れた頃、私達はさっきの場所にはすでにいなかった。
その代わり、少女の前には男が立っていた。
車に乗っていた男。確かこの部隊のリーダーとか言ってた…。
瞬間、彼の頭が吹っ飛んだ。アルテミスは目をそらし、苦い表情をする。
その様子を見ていた黒乃にも何があったのか分かった。
「すまない………。」
黒乃はボソっとつぶやいた。
ボロボロになった車に到着すると、黒乃はすぐさま死体から鍵を取った。
「さぁ乗れ!逃げるぞ!!」
私達が脱出するのを、少女は静かに見つめていた。
あとがき

「今度の24は!今までの見て無くても十分楽しめるんだ!!だから見て欲しい!!」
「・・・・・」
「しかもシリーズ最高傑作!!」
「しつこいわよっ!その話100回は聞いたわっ!」
初めての人でも楽しめる。24シーズンX


はい、すみません。遅れました。はい。Maji Sumimasen
でも、でもでも、自分のやりたい事やったもん!
10月6日?5枚?何の事です?
新しい武器とか出てきましたけど、理論とか聞かないで。ワカランから(ぇ
元々の予定では、アルテミスが登場したとこで終わらせる予定だったのが、まぁ色々ありまして書いちゃいました。てへっ! むしろクヒヒ
そんなこんなで次回にキターイ
by絶望君