ひらり。木を離れる木の葉を見た。
ひらり。宙に舞う木の葉を見た。
ひらり。地に落ちた木の葉を見た。

水溜りに一枚、落ちた葉が、流れていく。
生命のカケラが、いのちにのって、流れていく。
今までに流れた生命など。
今までに流したいのちなど。

私はもう知らない。
私には、もう、映らない。
第参拾参話 FATAL
車が道の砂利や小石を乗り越えるたびに、ガタガタとゆれる。
聞こえるのは小石と擦れるタイヤによって起こされる不定期なリズムだけ。
車に乗り4、5時間ほど経っただろうか、それまで会話などは端的な物くらいしかなく、
退屈だからか、セレネはずいぶん前から寝息をたてている。
「ふぅ、、、。」
、と、やや疲れ気味に七翔がため息をこぼす。
「なぁ、さっきから作戦作戦っていっている割には、あいつは何をさせるつもりなんだ?」
七翔が問う、”あいつ”とは、無論真薙のことだろう。
「作戦のことはわからないけど、相手が軍のことだから、近づいた時点で攻撃をしてくるはず。移動中に襲撃、ってこともありえるから、気をつけなければならないわ。」
アルテミスがさくっと説明する。つまり日本支部に近づきつつ、襲ってきた敵をすべて排除する、ということだな。しかし、そんなにも簡単なことも説明しないで敵陣につっこませるなんで無駄な行為極まりない。そのままつっこんで味方を皆殺しにでもする気だったのだろうか・・・。全く持って理解がしがたい。味方を何だと思っているんだ・・・。
あ、あいつのことだからきっと「駒さっ!」っと言ってのけるに違いない、きっとそうだ。
直接聞きたいところだが、残念ながら真薙は俺たちの乗っている車よりも少し後ろの車で移動している。着いてからでも問い詰めてやろうか。・・いや、時間と労力の無駄だな・・。

それからというもの、疲れのせいだろうか、車内の口数が減ってきた。
独り言のような思考がだんだん少なくなっていき、次第に意識が遠のいていく。。。
 
 
「着いたぞ、ご苦労だったな。」
私は何も言わない。
「これから計画の大ヤマだ。しっかりがんばるんだぞ。」
私は何も言わない。
「長距離におよぶ飛行は疲れただろう、少し休みでもとったらどうだ?」
私は何も言わない。
さっきから、見たことのあるような男の人が私に話しかけているように見える。聞こえる。
なんでここにいるんだっけ。忘れちゃった。
誰なんだろう、この人は?話しかけられてるみたいだけど、答えたらどうなるんだろう?
怖いのかな?わからない。
私がわからない、私は何で私?私ってどこにいるの?私は・・?わたしは・・・・
わからない。ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ。
なんで?どうして?なぜ?
分からないから、判らない、ワカラナイし解らない。
・・・・ああ、だめ・・・・私・・・・だめだよ・・・・私・・・・・

「No.006の精神状態が異常です!このままでは・・・!」
ほかの誰かが怒鳴る声が聞こえる、何でみんな怖がってるの?
「くっ、また精神不安定状態か・・かまわん、強制鎮静剤の投与を。」
こんどはさっきの男の人が何かしゃべった。
ッ痛っ・・・。
あぁ・・何・・眠く・・・。

「・・No.006、スリープ状態です。」
「ここへ来て、精神制御ができないのか・・困ったものだ・・。」
「仕方がありませんよ、No.006は実験台でたった2体だけ兵器としての素質が無いはずなのに兵器への改造に成功した1体ですから。それに、すべての能力においてもう1体の成功体より、はるかに上回っていますし、特異中の特異といえるでしょう。」
「ふむ。やはり特異体には特異は付き物なのだな・・。」
「さておき、No.006はどうしますか?村松さん。」
「そうだな、栄養剤と精神安定剤を投与しつつ、部屋にでも休ませておこうか。」
「了解しました。」

私は目が覚めると、外にいた、また、私の知らないところ。
目の前に知らない人たちがたくさんいる。
その中で何かを感じた、何かわからないけど、知らなくない。覚えているかも?
・・・あれ?あの子たちは・・・?
 
 
「・・きろ・・・・おい・・。」
ん・・。誰かが呼んでいる気がした。この声は聞きなれた声だ。えーと、たしか。
「おきろっつってんだろ!」
バシッ!
っと平手打ちが頬に飛んできた。いてぇ、何しやがる。
「どんだけ寝てるんだよ!もうすぐ東京だぞ!」
あぁ・・わかった、この声は七翔だな・・。
って、ええ!?
もうすぐ東京だと!?馬鹿な、俺はいったい何時間寝てたというんだ・・!?
「黒乃くん〜、疲れているからって8時間近くも寝ていることないんじゃないの?」
そんなに、寝ていたのか・・俺、これは参った、参った。
「あー、ごめんごめん、よっぽどつかれてみたいでさぁ〜。」
「まったく、緊張感のないやつね。戦場で寝るんじゃないわよ?」
「わかってるよ、大丈夫だ、もう回復!元気100倍だ。」
、と、そんなバカをやっている最中、アルテミスは自分の体をごそごそしていた。
「・・ん?アルテミス、何やってるんだ?」
「いや・・、真薙さんにもらった銃をどこかに隠し持っておこうかなと。」
なるほどね、さすが兵器ってやつだ、でもこうさらっと言われても体の中に隠すんじゃぁエグいよな・・。
「・・?何をじろじろ見ているのよ・・」
アルテミスが若干頬を赤くしながら言う。あぁ、一応恥ずかしいのか。
「あっ、ごめんごめん、続きをどうぞ!」
と言って、目をそむける、そこで七翔がにやにや笑っていた。この野郎・・・。
「くろのく〜ん、やっぱり君は変わらずろr・・」
七翔が言い終わるよりも早く俺の蹴りのほうが速度で勝っていた。はは、ざまーねぇな。
「・・ッ、っくそ、いってぇよなにすんだよ!」
「フフ・・その俺に対してのその言葉は禁句と国際法で定められているのさ!」
「しらねぇよ!いつからだよ!」
「なぁに、30秒前からだ、運が悪かったな。」
「この野郎よくも・・!」
「・・・・・・あ。」
セレネが間をさすように言う。
「ん・・?どうしたんだ?セレネ?」
一応、聞いてみる。
「うん。近いわね。」
アルテミスもそう言った、つまり・・。

「敵襲!前方に敵を確認!総員直ちに攻撃態勢!」
いや、襲っているほうはこっちだろう、という軽い突っ込みはいりませんか。
「敵はざっと・・・、300・・?たったのそれだけ?」
しかもほぼ装甲車による防壁。生物兵器の姿など、無論、無い。
「くっ、少なかろうが関係ねぇ!これでも食らえ!」
七翔がピンポイント射撃を連発する、無論狙うのは車両のエネルギーを蓄えておく、ガソリンタンクである。
バシュ!バシュッ!
改造型50口径弾が命中する度に装甲車から炎が上がり、爆発する。
「おい、なんだその威力は、笑えてくるな。」
と言ってやると、
「はは、前の銃を壊された恨みだ。今度は特大に改造しておいたぜ。」
さすが七翔。銃の恨みは恐ろしい・・のか?
「よし、私も外へ出て・・」
「いや、いい、今はまだここにいるんだ、アルテミス。」
アルテミスはぶすっとして、その場に座り込む。
ほかの生物兵器の子たちはおとなしくしている。
ルナとディアナは、特に何もすると言うことは無く。ただじっとしている。戦闘向きの能力ではないのだろうか・・?

攻略はあっという間に終わった。
それはそうだ、数では断然こちらのほうが有利だった。しかし、ここへ来て敵と遭遇するということは向こうはすでにこちらの状況を把握できている、ということなのか。
「そりゃぁ、レーダーもあるだろうし、私たち生物兵器はお互いの気を察知できるから、どの方向、どの距離にいるかなんて、すぐ悟られるわ。」
アルテミス曰く、そういうことらしい。
すると、ルナが目を閉じ、何かを念じ始めた・・のか?
「ん?どうした?なにをやっているんだ?」
するとディアナがどこからか(?)紙とペンを取り出し、何か書き始めた。なんだ、筆談ならできるのか。
”今、私たちの半径200mはステルス状態になりました。これで敵に気配を悟られることはありません”
ほうほう、なるほど、便利な機能だ。
「つまり、すこし方向を変えて向かわないと、ばればれってことね。」
「さすが渚、頭いい。」
「普通よ、あなたが頭悪いんでしょ、黒乃くん。」
そうか、そうなのか、あぁ、そんな感じがしてきた。
「よし、じゃぁ早速真薙に報告だ。」

「・・というわけなんです。」
「了解した、今から進路を少し北へ取ろう、北方向から攻め込む方向で行く。」

俺たちを乗せた車列は北へと進路を取った。
■■あとがき■■                           .exe
よし、終わった!
すべてを出したつもりだが、さらに線を増やしてしまったような気がしなくも無い。
あぁ、なるほど!って思ってくれたらありがたいけど、多分地味すぎてスルーされそうな・・。
今までで一番長くかけたかも、っというか戦闘Tまでいくのに物語的な距離が。。
やっぱり体調悪い、土壇場、がけっぷちのほうが物が書けますね!

では、次以降の方、全力でがんばってください。
最良と呼べる話を!
present byあげ