第参拾六話 存在の証明
日本支部を爆発した為に出来た巨大な穴の中、その隠された倉庫はあった。
俺達は倉庫に侵入、巨大兵器luna meetを破壊する為に進んでいる。
途中、残党の兵士が襲ってきたが何なく返り撃ちにしてやった。たった8人の部隊だが、
その半分は生物兵器で構成されている。今更10数人敵が現れたところで問題ではない。
そうして倉庫の中を進んで行くと、長い一本道の通路に出た。どうやら、この先にluna
meetがあるようだ。
そして、親父もそこにいるだろう。馬鹿親父、あんたのくだらない計画は俺達が潰す。
やがて長い通路も終わりが見えてきた。奥には両開きの大きな扉があった。
俺達が扉に近付いたその時、
「「!?」」
扉に触れていなかったのに扉が開いた。
とっさに戦闘体制をとる。
だが、開いた扉には誰もいなく、まるで「中に入ってこい」と誘っているようだ。
そのまま戦闘体制を保ちつつ中に入る。
「これか……!」
目の前に巨大な物体がところ狭しと息を潜めていた。
ある程度イメージはしていたが、それでも実際に見たら唖然としてしまった。
「ククク、驚いているようだな」
聞きなれたその声の持ち主は、俺達の前に姿を現した。
「親父……っ!!」
真薙が声を発し、睨みつける。
「計画はもう終わりだ。親父、あんたの死で決着をつける」
「果たしてそれが出来るかな?」
「その減らず口もこれで終わりだ!」
真薙が親父に向けた銃の引金を引いた。だが、その銃弾が親父に届く事はなかった。
「な、なんだと…っ!?」
銃弾はまるで初めから撃ってなかったかのように消えた。
何が起きた?銃弾はどこへ行った?
「黒乃、あっち」
セレネの声を聞き、俺は彼女の指差す方へ視線を向ける。
親父からかなり離れているそこに、深緑の髪を持つ少女は立っていた。
あれは…ヘカテ?あそこから親父を守ったのか?だが、一体何をしたんだ?
俺の困惑した顔を見て、察知したのかアルテミスが口を開く。
「…おそらく私と同じ能力。不可視光線よ」
「ご名答。当ったついでにいい事を教えてやろう。アルテミスの一点集中型の不可視光線と違い、ヘカテの不可視光線は点では無く線状だ。撃つ斬撃と言ったところかな?」
親父はペラペラと得意気に話始めた。さも、完成した生物兵器を自慢するように。
その間、ヘカテはこちらに少しずつ近づいてくる。
「ただ完成したはいいが、精神が不安定の状態でな。私の言う事など聞きはしない。だが、戦闘には敏感でな。今も誰かさんが撃ってくれなかったら、銃弾に反応せずにあのまま突っ立っていただろう。困ったもんだな、ハッハッハ!」
親父は不気味に笑うと、左腕につけていた腕輪を操作し始める。あれは…っ!?
「マズイッ!村松を止めろ!」
先に気がついた七翔が叫びながら、銃撃を放つ。
だが、その銃弾はヘカテの光線によりかき消されてしまう。
「そいつはもう止まらない。ここに誰もいなくなるまでな」
親父はそう言うと、姿を消した。
あの腕輪は、最初に出会ったアルテミスが身につけていた物と同じ物だった。
装着した対象物を周囲の背景と同化させてしまう究極の隠れ蓑。辺りを見回すが当然何も見えない。
くそっ…!親父に逃げられちまう…!!
「黒乃、村松の事に関してはいい案があるの。だから、今はヘカテに集中して!」
渚の声に俺はハッとする。そうだ、まずはこちらをどうにかしなければ!
ヘカテはもうすでに近くまで来ていた。ゆっくりとしたその歩調が止まる事はない。
「みんな!散るんだ!固まっていると全員が攻撃を受けるぞ!」
真薙の声に反応するかのようにバラバラに分かれる。
最初にヘカテに目をつけられたのはセレネだった。セレネは足を撃ち抜かれ、倒れた。
「「セレネっ!?」」
全員の足が止まった。
ヘカテは倒れこんでいるセレネに向かい、光線を放った。
一瞬の出来事。
俺は何も出来なかった。
攻撃を受けたのはセレネでは無く、七翔だった。
セレネをかばうように彼女の前で立っていた。
七翔の脇腹を貫通した光線は角度を少しだけ変え、セレネには当らなかった。
振り返り、セレネが無事だと分かると七翔はニヤリと微笑み、崩れるように倒れた。
「七翔ぉーーーーっ!!!」
渚が七翔に駆け寄り、七翔を抱きかかえる。
「うおおおおお!!!」
俺はヘカテに向かって銃を乱射する。
それをヘカテはものともせずに光線を放ち防ぐ。
その瞬間をアルテミスは見逃さなかった。不可視光線を操る者だけに分かる弱点、光線を放った一瞬、無防備になるということである。もちろん、銃弾を撃たれたとしても物理法則ぎりぎりまで動けるアルテミスにとって避ける事は簡単だ。銃弾なら、の話だが。それが自分と同じ不可視光線だったら……
アルテミスの読みどおり、光線を避ける事の出来なかったヘカテは体を貫かれた。
光線の通り道となった体には小さな穴が開き、血が吹き出る。
更にアルテミスは攻撃を続け、ヘカテに光線を浴びさせた。
やがてヘカテは立つ事すらままならなくなり、倒れた。
勝った。
そのあまりの呆気なさに、あまり実感が湧かないが事実だった。
そうだ!七翔は大丈夫なのかっ!?
俺は七翔に駆け寄り、渚の言葉を待った。
「…大丈夫、なんとか生きてるよ。でも、早くしないと血が………っ!」
渚は涙目になりながら、七翔の傷の応急処置をしている。
辺り一面には七翔の血が広がり、その出血の多さを物語っている。
早く手当てをしなければ…っ!
そう思い、真薙に指示を仰ごうと振り向いたその時、
「なっ……!!?」
そこには4人の倒れている姿と、倒したはずのヘカテが立っていた。
ヘカテが受けた光線の傷跡は、みるみると小さくなっていき、傷跡が無くなっていった。
再生能力。
それがヘカテに与えられたもう一つのチカラ。
倒す事の出来ない敵を相手にどうすればいいのか?もしかしたら、体を八つ裂きにしたりバラバラにすれば、再生出来ないのかもしれないが、アルテミスですら倒されてしまったんだ。俺達にそんな力はない。
もうダメだ。殺される。俺達は負けてしまった。
あれだけ威勢のいい事言ってた真薙もあのザマだ。生きているのか死んでいるのか分からないが、もう何も出来ないだろう。
そんな時、ふと腰のホルスターに入っていた銃に手が触れる。
…この電撃光線銃ならどうだ?もしかしたら、この銃ならヘカテを気絶させ、止める事が出来るんじゃないか?だが、俺一人、いや渚を入れた二人でヘカテと戦えるのか?
いや、俺達にはもう一人、頼もしい仲間がいた事を忘れていた。
倒れていたその子は痛みを我慢しながら立ち上がり、言葉を発する。
「今度は…わたしが黒乃達を守る番!」
あとがき

この時間の無い時に滞納してしまってすみませんorz
はい、もう僕には「持ち時間は1人1日なんだよ?」なんて偉そうな事言えませんね。
もし言ったらぶん殴って下さい。あ、やっぱり痛いからやめて。
by絶望君