「さっきから何一人でブツブツ言ってるの!?そんなことよりさっきタケシからとったその血の十字架を返しなさい!」
屋上の扉の向こうからはマキノの怒声が聞こえてきた。
タケシたちが屋上の扉を開くとマキノともう一人見知らぬ女性が立っていいた。
その女性は見た目こそ普通ですれ違っても印象に残らなそうな雰囲気だった。
しかし、眼だけは違う。あれは一般人がしている目じゃない。冷たくて、暗くて、目的のためなら手段を選ばない。そんな眼をしている。
彼女はマキノを軽く見た後トウヤをにらみつけた。
「追いつかれましたか。あなた一人なら私一人で何とかなると思っていましたが、春夏秋冬の手ものまで来てしまったのなら話は別ですね」
彼女はそう言うなり懐から青い水晶のようなものを取り出し上に投げた。
そしてその水晶が落下してくると予想される場所には水晶ではなく小さなドラゴンのような生き物が降りてきた。
「レヴァ!フレイム!!」
その小さなドラゴンは口思いっきりあけた。その口のすぐ前には赤い炎の球体が少しずつ大きくなっている。
「みんな伏せて!!」
タケシたちは尋常じゃないトウヤの声に従いその身を地面にこするように伏せた。
炎の球体はレーザーのような形状に形を変えて放たれた。
たぶんみんな同じことを考えただろう。もしトウヤが叫ばなければ後ろの扉のように自分たちもなっていただろうと。
鉄でできているはずの扉は炎天下の中放置したアイスキャンディーのようにドロドロに溶け、その周りの壁は粉々に砕けていた。
「なんなのよ、あれ?」
「もしあんなのに当たったら薔薇色の学園生活どころか本当の天国に行っちまうよ」
そんなことを言っている間にドラゴンが二発目を用意し始めた。
「今のは、はっきり言って威嚇です。伏せなくても当てるつもりはありませんでした。しかし、次は当てます。この距離ならそこの春夏秋冬の手のものならともかくほかの三人は当たります。さあ、そうされたくなかったらこちらに『村正(改)』を渡しなさい。」
第九話 いったい何者?
bytaranoko