「今のは、はっきり言って威嚇です。伏せなくても当てるつもりはありませんでした。しかし、次は当てます。この距離ならそこの春夏秋冬の手のものならともかくほかの三人は当たります。さあ、そうされたくなかったらこちらに『村正(改)』を渡しなさい。」
緊迫した空気が周囲に充満し、突き付けられた選択に戦慄する。
身動き一つできない状況の中、それを打ち砕く気配があった。
第十話 なめんな!
「お断りよ!」
いままさに脅迫を受けた相手、そしてその砲台―空中で火球を咥えている竜に、マキノが言い放った。そしてその勢いのまま、空中砲台に向かって得物を投げつける。
((はぁ、やっぱりそうなるか…))
トウヤはその光景をみて嘆いていた。この状況下で彼女がとるであろう行動、その最たるものが目の前で展開されたからだ。ため息の横で、他の二人は震え上がっている。
「レヴァ撃ってっ」
空中を抉らんばかりの勢いで竜へと向かう鉄球。彼女のとった強攻策―というよりは奇行を受け、司令官は咄嗟に砲台に発射命令を飛ばす。
が、自らへ向けられた攻撃に対して、砲台は司令官のそれよりも早く反応。号令が発せられる前に既に大砲は発射されていた。



両砲手の間、空間そのものが爆ぜた。

飛来するお互いが出遭った瞬間、

周囲を凄まじい衝撃波が襲う。

迎え撃つ灼熱の光線。

それは飛来する鉄球を退け、

その先の本来の目標へと命中する。



…はずだった。
しかし実際は違った。

轟々と唸りをあげ飛来する鉄球は、放たれた熱線と衝突。
瞬間、それを放射状に拡散させ、喰い千切るようにその根源へと迫っていった。
迫り来る脅威に成す術もなく、直撃。吹き飛び落下する。
「レヴァ!!?」
眼前で起きた結果に驚愕する者。駆け寄る。
「ふんっ。避けられないなら受けるまでよ!」
対し、勝どきをあげる者。ガッツポーズ。
「受けるというよりは、叩くですよね…。」
吐いた台詞と行動のギャップを指摘する声。安堵。
その行動、両者の立場を物語る。

溶けたドア。
うずくまる竜。
逆転を告げるチャイムが響いた。
by図書神