翌日。
リンは昨日の件もあり、今日は学校を欠席。
体調が悪いという理由で自宅にて休息するとの事であった。
(最も、昨日の黒い何かが明らかになるまでうかつには動けないというのもある)
皆との打ち合わせで、今日その旨を学園長に報告すると決めていた。
「それにしても」
と、ここまでの状況を頭の中で整理した上で、タケシは一人ごちた。
「単位どころか、命も落としそうな状況じゃねーのか?これ・・・・・・」
第十三話 水面下の同盟
昼休みの教室内。
ささいな事から(また)マキノの逆鱗に触れてミンチ未満になりながらも、タケシは
何とか生きていた。教室内はタケシの鉄臭い体液で赤く染められており、騒ぎになれた何人かの生徒が掃除にかかっている。
「あちゃー・・・また手ひどくやられたものだね、生きてる?」
「トウヤ、絶対にあいつが魔王だろコラ」
そんな悪態をつきながらも、友人の手を借りて何とか起き上がる。と、教室のドアが開き、見知った顔が現れた。
「こんにちはー・・・あれ?」
真っ赤になった鉄臭い教室に戸惑いながらユイが教室に入る。靴が汚れるのを嫌い、うまく血溜りを避けながらユイは二人の元へと向かう。
「タケシ君・・・毎度気になるのですが、なんでここに来るたびに室内が赤いのでしょうか」
「察してください」
天然なのか確信犯なのか分らないが、とにかく心配してそうな表情をするユイに同情を求めるようにタケシがうめく。
「・・・こんにちは姫井君。昨日は大変でしたね」
「・・・ですね」
「?どうしたんだよ二人とも、なんかぎこちないぞ?」
奇妙な違和感。タケシは疑問に思い、思わず尋ねてしまう。
「いえ、何でもないですよ?」
即答だった。
「そうそう、タケシは気にしすぎるのさ」
「何だよ二人して。なんか隠し事でもしているのかー?」
その何気ない一言に、ユイは思わず動揺してしまう。
昨日の図書室の一件もあり、ユイはトウヤに対して少なからず苦手意識を持っていた。
一方でトウヤはというと、まったく動揺する気配も無くタケシに向き合っている。
「まったく、お前はいつも何か含んだ言い方するよなぁ」
「性分なのさ」
と、無味乾燥な笑顔で応じる。
「そうだ姫井君。話したいことがあるの、後で校舎の裏に来てくれないかな」
ふとトウヤの表情に一瞬だが暗い影が走る。が、また一瞬の後にはいつもの苦労人の顔があった。
「わかったよ、僕だけでいいのかい?」
「ええ、よろしくね」
それだけ言い残し、ユイはあらかた片付き始めた教室を後にした。
「おいおい、お前とユイちゃんってデキてたっけか?」
「何がだよまったく・・・・・・・・・早めに手は打つかな。ちょっと行ってくる」
と言い、トウヤも教室を出る。
「?変なやつら」
一人残されたタケシは、ぼんやりとつぶやいた。周りの生徒たちは(お前も充分変だろ)と、内心思っていたりしているが。
「すぐ来てくれると思っていました」
校舎裏で向き合う男女。客観的に見れば恋愛物の漫画のワンシーンにでも見えるであろうが、当人たちの間に流れる雰囲気はそのような気はまるで無く、むしろ殺伐とした空気が流れていた。
「用件があるなら早めに済ませようか。僕は忙しいから」
トウヤの冷たい一言。だがユイは微塵の動揺も無く、口を開く。
「まずは昨日の失礼を詫びさせてください、すいませんでした」
「・・・随分と下手にでたね、君ともあろう者が」
一瞬の沈黙。
「・・・・・・今の私の力ではあなたは倒せない。少なくとも、敵に回してはいけないと思っています」
「いい判断だ。君も中々あなどれないな」
トウヤの口元がすこし釣り上がる。が、まだ表情は暗く冷たい。
「君もやつらとの付き合いは長そうだ。薄々は感づいているようだけど、最近はやつらも力を増しつつある」
「ええ、小宇宙の記憶 の力から抜けつつある程に」
そうユイは言うと、抱えていた小宇宙の記憶 のページをめくりトウヤにあるページを見せる。そのページには、墨か何かを撒かれたように真っ黒に染められていた。
「驚いた・・・まさかここまでとは」
と、トウヤが始めて動揺する。
「やつらと戦うためにも、最低限の情報の共有は必須です。そのためにもあなたの持っている知識が欲しい」
「それが本題?」
「ええ」
ユイはため息をひとつ吐き、小宇宙の記憶 を閉じる。同時に、トウヤも安心したかのようにため息を吐く。
「そうしたければ、初めから僕に聞いてくれればよかったんだよ。いきなり調べようとするから僕もあんな馴れない態度をとらなきゃいけないんだ」
「ごめんなさい」
ユイは素直に頭を下げる。
「もういいよ。だけどどうする?仮に皆に話したところで、今の状態ではやつらに対して何もできないだろうに」
「せいぜい気休めにしかならないでしょうが、それでも心構えが出来ているのと出来ていないのとでは心理的にかなり違いはありますから・・・・・・・・・!」
「!?」
突然ユイがトウヤを突き飛ばす。と、突如植込の中から黒い何かが飛び出して来た。
それは凄い速さでユイとトウヤに迫り、二人を飲み込もうとする。トウヤはユイに突き飛ばされた反動を利用しその場を飛びのいて草薙刀を具現させるが、ユイはそのまま黒い物体に完全に飲み込まれてしまった。
「ユイさんっ!」
直後、黒い物体の中からくぐもった声が聞こえる。
「・・・・・・・・・巨視的な小宇宙 」
声がした後、黒い物体がみるまに縮んでいく。いや、縮んでいるのではなく、いつの間にかユイの手にあった、小宇宙の記憶 とは違う本の中に飲み込まれているのだ。
完全に黒い物体が本の中に飲み込まれたのを見計らって、ユイは本を閉じる。同時にチャイムが鳴り、授業の合図を告げる。
「・・・姫井君。少し、急いだほうが良いと思います」
「・・・・・・・・・そうだね、行こう」
教室に戻ろうとし、ふとユイが振り向く。
「姫井君、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく」
と、自分たちが明らかに授業に遅刻しているのを思い出して、二人は自分の教室へと慌てて向かった。
ささいな事から(また)マキノの逆鱗に触れてミンチ未満になりながらも、タケシは
何とか生きていた。教室内はタケシの鉄臭い体液で赤く染められており、騒ぎになれた何人かの生徒が掃除にかかっている。
「あちゃー・・・また手ひどくやられたものだね、生きてる?」
「トウヤ、絶対にあいつが魔王だろコラ」
そんな悪態をつきながらも、友人の手を借りて何とか起き上がる。と、教室のドアが開き、見知った顔が現れた。
「こんにちはー・・・あれ?」
真っ赤になった鉄臭い教室に戸惑いながらユイが教室に入る。靴が汚れるのを嫌い、うまく血溜りを避けながらユイは二人の元へと向かう。
「タケシ君・・・毎度気になるのですが、なんでここに来るたびに室内が赤いのでしょうか」
「察してください」
天然なのか確信犯なのか分らないが、とにかく心配してそうな表情をするユイに同情を求めるようにタケシがうめく。
「・・・こんにちは姫井君。昨日は大変でしたね」
「・・・ですね」
「?どうしたんだよ二人とも、なんかぎこちないぞ?」
奇妙な違和感。タケシは疑問に思い、思わず尋ねてしまう。
「いえ、何でもないですよ?」
即答だった。
「そうそう、タケシは気にしすぎるのさ」
「何だよ二人して。なんか隠し事でもしているのかー?」
その何気ない一言に、ユイは思わず動揺してしまう。
昨日の図書室の一件もあり、ユイはトウヤに対して少なからず苦手意識を持っていた。
一方でトウヤはというと、まったく動揺する気配も無くタケシに向き合っている。
「まったく、お前はいつも何か含んだ言い方するよなぁ」
「性分なのさ」
と、無味乾燥な笑顔で応じる。
「そうだ姫井君。話したいことがあるの、後で校舎の裏に来てくれないかな」
ふとトウヤの表情に一瞬だが暗い影が走る。が、また一瞬の後にはいつもの苦労人の顔があった。
「わかったよ、僕だけでいいのかい?」
「ええ、よろしくね」
それだけ言い残し、ユイはあらかた片付き始めた教室を後にした。
「おいおい、お前とユイちゃんってデキてたっけか?」
「何がだよまったく・・・・・・・・・早めに手は打つかな。ちょっと行ってくる」
と言い、トウヤも教室を出る。
「?変なやつら」
一人残されたタケシは、ぼんやりとつぶやいた。周りの生徒たちは(お前も充分変だろ)と、内心思っていたりしているが。
「すぐ来てくれると思っていました」
校舎裏で向き合う男女。客観的に見れば恋愛物の漫画のワンシーンにでも見えるであろうが、当人たちの間に流れる雰囲気はそのような気はまるで無く、むしろ殺伐とした空気が流れていた。
「用件があるなら早めに済ませようか。僕は忙しいから」
トウヤの冷たい一言。だがユイは微塵の動揺も無く、口を開く。
「まずは昨日の失礼を詫びさせてください、すいませんでした」
「・・・随分と下手にでたね、君ともあろう者が」
一瞬の沈黙。
「・・・・・・今の私の力ではあなたは倒せない。少なくとも、敵に回してはいけないと思っています」
「いい判断だ。君も中々あなどれないな」
トウヤの口元がすこし釣り上がる。が、まだ表情は暗く冷たい。
「君もやつらとの付き合いは長そうだ。薄々は感づいているようだけど、最近はやつらも力を増しつつある」
「ええ、
そうユイは言うと、抱えていた
「驚いた・・・まさかここまでとは」
と、トウヤが始めて動揺する。
「やつらと戦うためにも、最低限の情報の共有は必須です。そのためにもあなたの持っている知識が欲しい」
「それが本題?」
「ええ」
ユイはため息をひとつ吐き、
「そうしたければ、初めから僕に聞いてくれればよかったんだよ。いきなり調べようとするから僕もあんな馴れない態度をとらなきゃいけないんだ」
「ごめんなさい」
ユイは素直に頭を下げる。
「もういいよ。だけどどうする?仮に皆に話したところで、今の状態ではやつらに対して何もできないだろうに」
「せいぜい気休めにしかならないでしょうが、それでも心構えが出来ているのと出来ていないのとでは心理的にかなり違いはありますから・・・・・・・・・!」
「!?」
突然ユイがトウヤを突き飛ばす。と、突如植込の中から黒い何かが飛び出して来た。
それは凄い速さでユイとトウヤに迫り、二人を飲み込もうとする。トウヤはユイに突き飛ばされた反動を利用しその場を飛びのいて草薙刀を具現させるが、ユイはそのまま黒い物体に完全に飲み込まれてしまった。
「ユイさんっ!」
直後、黒い物体の中からくぐもった声が聞こえる。
「・・・・・・・・・
声がした後、黒い物体がみるまに縮んでいく。いや、縮んでいるのではなく、いつの間にかユイの手にあった、
完全に黒い物体が本の中に飲み込まれたのを見計らって、ユイは本を閉じる。同時にチャイムが鳴り、授業の合図を告げる。
「・・・姫井君。少し、急いだほうが良いと思います」
「・・・・・・・・・そうだね、行こう」
教室に戻ろうとし、ふとユイが振り向く。
「姫井君、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく」
と、自分たちが明らかに授業に遅刻しているのを思い出して、二人は自分の教室へと慌てて向かった。
byキング