何処かで何かが砕ける音・・・・・・
ドクンドクン・・・・・・
着々と闇は胎動する・・・
「ねぇ。なんか今凄い音しなかった?」
マキノ達の耳にも届く轟音。その音が胸の中の何かをざわつかせる。
「多分方角からしてプールだね。」
トウヤの言葉にマキノはいち早く駆け出した。
「あっ!マキノさんっ!」
駆け出すマキノを追いかけるトウヤ。さらにそれを追うサク。
(何この感じ・・・初めて感じる物凄く嫌な感じ・・・・・・)
マキノは轟音の元へただかける。
「体のあちこちが・・・痛い。」
タケシの攻撃によりプールへと落下したユイ。
まだプールに水が張ってあったからよかったものの水が無かったらば即死であろう。
死にはせずとも骨の何処かにヒビが入ってるかもしれない。入ってなくとも全身を凄い勢いで水に打ちつけたのだ。骨にヒビが入ったような痛みがユイの全身を蝕む。
(早く・・・皆に伝えないと・・・っ!)
痛みに悲鳴を上げる身体を必死で動かす。
その目の前に現れるのは・・・・・・
「魔具ヲ壊ス・・・全テ・・・」
赤黒い悪魔だった・・・・・・
「あっ・・・」
再び現れた悪魔にユイは腰を抜かしてしまう・・・
一歩進まれれば一歩分後退する。
恐怖。
死ぬかもしれない。
恐怖。
いつもと違い悪魔となったタケシに対する。
恐怖。
身体の全てがユイの生存本能が警告する。
逃げろ、逃ゲろ、逃ゲロ、にげろ、ニげろ、ニゲろ、ニゲロ。
ただ全身を巡る痛みと恐怖が身体を動かなくする。
(誰か・・・誰か・・・・・・助けてっ!!)
その時だった・・・
「このぶぁぁぁかぁぁぁちんがぁぁぁぁぁっ!!!!」
鼓膜を破かんとするぐらいの大きな声と共に響く。
ドカリと言う聞きなれた撲殺音。
聞きなれたと言うのもいささかどうかと思うが間違いない。
マキノだ。
突如の不意打ちに悪魔と化したタケシもダメージを受けるが・・・
「魔具ヲ壊ス・・・」
「なぁぁぁにが魔具を壊すだぁぁぁぁっ!!!」
マキノのご自慢の村正(改)のロケットブースターを零距離から食らう。しかも顔面に・・・・・・。
初撃を耐えて見せたタケシもそれには耐え切れず倒れる。それをいいことにタケシの撲殺を開始する魔鬼乃。
トウヤ達も来てくれた事にユイは安堵する。
一通り撲殺を追え満足したのかタケシらしきものを引きずりながら現れたマキノ。
「マキノさんも満足したようだし。場所を移そう。このままじゃユイさんが風邪をひいちゃうから・・・」
一同はユイを支えながら保健室に向かう。
サクがユイに近づくことが出来なかった事とプールから保健室までに赤い痕跡が残ったのはここだけの話。
保健室。
プールに落ちて冷えた身体を暖めながらユイは告げる。
自分が気づいた真実と
一同は黙って聞いていた。反論が出来るはずも無い
ユイの見解を聞いてトウヤの顔から表情が消え失せ保健室の出口に向かう。
「トウヤどこに行くのっ!!」
「ちょっと行かなきゃ行けないとこが出来た」
マキノの問いにそう告げ部屋をあとにするトウヤ。
「しっかし。
「はっきりとはわかりませんが
そのような会話をしながら二人は包帯でミイラ状態になっているタケシを見た。
保健室を去ったトウヤが向かった場所それは。
理事長室。
「理事長どういうことですかっ!
理事長室に入るなり椅子に座っている理事長に声を荒げるトウヤ。
「なに声を荒げている。
「しかしっ!タケシのあれはなんなんですかっ!」
納得が出来ないトウヤは春夏秋冬に詰め寄る。それを無視するように春夏秋冬はトウヤにつげる。
「ちょうどいい機会だ。君に伝えておこう」
トウヤは春夏秋冬の言葉を聴いて全ての思考が停止する。
「理事長・・・今なんていいました?」
「もう二度も言わんぞ?魔王を倒したその後に・・・」
―――タケシを殺す―――
「なぜですっ!!なぜタケシがっ!!」
「それはね。彼が『破壊者』に選ばれたからよ。」
どこからとも無く響く第三者の声。
「かい・・・ちょう・・・?」
「
「そ、そんな・・・」
突きつけられた真相にトウヤは膝を地面についた・・・・。
第二十五話 世界への生贄