昔、ある所に二人の男がいました。

片方の男は隣に居る男に尋ねました。

『なぜ、この世に弱者と強者が存在するんだろう。』

隣居た男は答えます。

『違うよ、強者が弱者を生み出すんだ。』

その答えに男は胸元の十字架に触れながらさらに問いかけます。

『じゃあ僕らのこの魔具は存在しないほうがいいじゃないか。』

しかし、男はその答えに首を振ります。

『だからだよ。だから、俺らでこの全てにケリをつけるんだ。この後の世代に俺達みたいな存在が否定されず存在するために。』

そう言って男達は前に進んだ。
第三十二話 友との誓い
地面に体が叩きつけられる。その反動で飛びかけた意識が強制的に覚醒される。
(懐かしい・・・夢を見たものだ・・・)
体が悲鳴を上げるがそれと同時に傷はみるみる内に治る。これが『血の十字架』の副産物。この再生力こそが春夏秋冬を『化け物』と蔑む由縁。
(もし、今の俺を見たら・・・お前達は笑うだろうか・・・復讐のために世界を消すなどと・・・)
自傷の笑みを浮かべ空を見る。
(あの時と同じように今にも泣き出しそうな空だ・・・)
マキノのたった一撃に自分が『なぜ』『どうして』こんな道を選んだのかを・・・

空を見上げていると嫌でも『あの時』を思い出す。




『なぁ・・・春夏秋冬。百人が百人。俺達を嫌うことがあっても・・・千人が千人。・・・一万人が・・・一万人・・・俺た・・・ちを・・・嫌うことはないと思うんだ。・・・この世に100%がない様に・・・この『世界全て』が・・・俺達の存在・・・全て・・・を・・・否定するなんて・・・』
『わかったから喋るなっ!生きろっ!お前が死んだら私に『友』は居なくなるっ!だから死ぬなっ!』
『へへ・・・わりぃな・・・ダチ公・・・俺は・・・こ・・こ・・・ま・・・』
『おいっ!目を開けろっ!開けてくれっ!友よっ!うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』




(あぁ・・・これが私の全ての始まりだったのだな・・・この時の『誓い』が・・・)
物思いに耽っていると傷は癒え体を動かすには支障のないレベルまで回復した。

「さぁっ!観念しなさいっ!」
春夏秋冬の前には自分をここまで吹き飛ばした元凶であるマキノ。
その後ろにはタケシ、少し遅れてユイがいた。

(思い出したが故・・・)

「解せんな・・・」
春夏秋冬は小さく呟く。マキノ達に聞こえるか解らないぐらいの声で・・・
「観念・・・しなさいっ!」
ロケットブースターから鉄球が放たれる。
「当たらなければどうと言うことはない。いきがるだけの半端な意思(つよさ)では私は倒せんぞ?」
春夏秋冬の雰囲気が変わっていることにマキノ達は気づく。今までの春夏秋冬が『獣』とするなら今、目の前に居る春夏秋冬は理性を持った『人』である。
(これは・・・一筋縄じゃいかなそうね・・・)
今までの春夏秋冬ならば簡単にいったのにと内心舌打ちをする。

「しかし解せんな・・・?タケシ何故お前が、そちらにいる?」
その言葉にタケシたちの動きが止まる。
「お前は何故そちらで笑う?私の唯一無二の『友』であり、貴様の『父親』を殺した血を受け継ぐ奴らとっ!」
「「「!?」」」
その言葉に三人は言葉を無くす、しかしすぐにマキノは言葉を放つ。
「そんな出鱈目信じられるもんですかっ!」
「否定する言葉も持たないだろう。『この時代』の人間じゃない君には」

春夏秋冬が言っていることは正論だ。マキノは過去か未来か、はたまた別の世界からきた存在。彼女に真実を判断することは出来ないのだ。

「人ならざる者と排斥され、追われ続け、その存在を私達は否定され続けたっ!彼は貴様らと『対話』のテーブルにつき話し合いを持とうとしたのにっ!佐藤がっ!槙野がっ!姫井がっ!卑劣な罠に掛け謀殺したのだろうがっ!」
「嘘ですっ!!お父様が、お父様達がそんな事するはずありませんっ!」
「楽なものだな。佐藤ユイ。父達を正義と信じ解らぬと逃げ、知らず聞かず!『話し合えばよかった?』その機会を壊したのは誰だっ!もはや、私を止める術など出来ぬっ!誓ったのだっ!今は亡き友にっ!全てを終わらせ、私たちの存在を認めさせるとっ!その為ならば世界も滅ぼすっ!貴様ら御三家の業が生んだその果ての終局だっ!逃げるすべなどないっ!そして滅ぶっ!人は滅ぶべくしてなっ! 」

ユイは顔面蒼白で崩れ落ち、マキノは苦虫を噛み潰したような表情。
「君の母彼の子供であるお前を宿し、佐藤や、槙野や、姫井にお前と言う存在がばれない様に逃げ、生まれてからも奴らの目が届くのではないかと怯え続けたっ!タケシお前は父を殺しっ!母を今もなお怯えさせる奴らが笑う世界で奴らと一緒に笑うのかっ!」

その言葉にタケシは一人。顔を上げる。

「春夏秋冬、あんたの誓いも言い分も解った。俺は確かに親父を知らない。母さんはトウヤたちの名前を聞いた時今思えば怯えてたかもしれない。だけどよ・・・」
一旦言葉を区切り大きく息を吸い言葉を言い放つ

「ふざけるなよっ!大馬鹿野郎っ!」

その言葉にユイとマキノがタケシを見る

「死んだ父親があんたのダチだったとかそんなもん関係ねぇっ!親父の顔なんかしらねぇし!アンタが言ってることが本当かどうかもわからねぇっ!だけどな・・・俺がマキノとユイとトウヤとシュウヤの兄貴と会長さんと出会って馬鹿やって笑ってたあの時間は嘘じゃねぇっ!」
一通り言った後春夏秋冬に向かって言葉を続ける。
「『もし』とか『たら』とか『れば』とか、親父がどうとかそんなもん関係ねぇ!『こいつらと過ごした学園生活は楽しかった』それが俺のたった一つの真実だっ!それに春夏秋冬、あんたが誓いを立てように俺にもあんだよっ!誓いって奴がっ!」

タケシ誓い・・・それは・・・

・・・時は春夏秋冬の戦いの前に戻る

保健室。春夏秋冬との戦いとの前にタケシはここを訪れた。
「春夏秋冬の奴にマキノが喧嘩売りやがってよ〜。まぁこのまんまって訳にはいかねぇしな。」
タケシの言葉に返ってくるはない。独り言のようにタケシは呟く。
「お前が居たらきっと状況も楽なんだけどな〜。」
あははっと笑っておどけるタケシ。ひとしきり笑うと急にタケシの顔に影がさす。
「全部・・・俺のせいだよな・・・トウヤ」
カーテンの向こうで眠っているであろう友に言葉を紡ぐ。
「俺のせいだってのは判ってる。お前がここで、こんな風になってるのも・・・。暴走した俺を必死に止めたお前への感謝の言葉も届かねぇ・・・」
今にも泣きそうな声でタケシは紡ぐ。
「マキノみたいに村正(改)やユイみたいに新世界の門(ヘブンズゲート)をもっているわけじゃない。正直、俺に何が出来るかとかわからねぇ。正直生きて帰ってこれるかすら自信もねぇ。でもよ・・・戦うよ。お前の想いも会長さんの想いも背負って。そんで勝ってくる。」
これがタケシの『誓い』。自らのせいで傷つけた友へ勝利を、目を覚ましたときに戦いの日々に戻らなくて済むように・・・
「だからさ・・・生きて帰って来れたら・・・トウヤのこと、また・・・友達って呼んでいいか?」
そう言ってタケシは保健室をでた。




「誰にも関係ない。俺だけの誓いだ。」
春夏秋冬に向き合うタケシ。
「なるほど。お前も在るのだな誓いが・・・だがっ!友の子供であっても私も退けぬっ!媚びぬっ!省みぬっ!友に誓った事を果たすためにっ!」
「俺もひけねぇ・・・」
タケシは腰を落とす。それを見て春夏秋冬も身構える。
「いくぜぇぇぇっ!春夏秋冬ぃぃぃっ!」
「こいっ!タケシっ!」


この戦いに正義も悪も無い
ただ互いに誓いがぶつかり合い
血を流すだけだ ・・・
あとがき
『この世に100%がない様にこの『世界全て』が俺達の存在全てを否定するなんてないんだよ』
タケシの父親(?)が言った台詞は俺の持論。
どうでもいいことだけど、俺の中で春夏秋冬のCVが確定したwww台詞回しを読み返していただけばわかると思うがwww
珍しく長いな。絶望氏には負けるけど。
じゃ次いってみよう(・ω・)ノシ
byJTR