『エンジェル』?
『天使』だって?目の前で犯罪者といえ簡単に殺したこいつが?
口元に笑みを浮かべて人を殺したこいつが?
おいおい冗談はやめてくれ。
こんなの『天使』じゃなくて……
『悪魔』の所業だろ?
第四話 悪魔と龍
―繁華街某所
「レオ、レオ、レオっ!」
レオと呼ばれた少年の下に赤いポニーテールの少女が駆け寄った。
「どうした?ユナ、あれほど持ち場を離れるなと…」
「どうしたじゃないよっ!来たよっ!来たんだっ!『天使』がっ!」
「あぁ…そのようだな」
「約束だったし、いいよね!あたしも行っていいよね!?答えは聞いてないけどっ!」
あぁそういえばそんな約束をしたなと頭の片隅でレオはユナに言った事を思い出した。
一息ため息をつきレオは諦めたように手を上げてユナに告げる。
「わかった、わかった。行って来ていいぞ。ただし、無理はするなよ。」
「ラジャー♪じゃあ、いってきまーす。」
ユナはまるで新しい玩具を与えられた子供のように笑顔を浮かべレオの元を去った。
「奴らも早々に動き始めたか。あまり面倒な事になってくれなければいいが…」
再びため息をつくとレオはその場を後にした。
―閑話休題
フロウと名乗った少女は特に悪びれる様子もなく、当たり前のようにその場にいるアポカリプスホルダーに告げる。
「最初に言っておくけどボクは強いよ?おとなしく捕まって『九龍』についてゲロってくれたらOK♪抵抗したら人権無視して君のお兄さんと同じ末路を辿ってもらいまーす♪」
相変わらずフロウは笑みを崩さない。そんなフロウの態度に兄貴を殺されたアポカリプスホルダーは黙っているはずがない。
「この、アマァァァァァァっ!!」
腕を刃物に変えフロウに襲い掛かる。されど、その刃物はフロウには届く事はなく。
「あっ、ごめーん♪犯罪者に元々人権なんてなかったんだ♪」
彼女の宣言どおり、彼は兄と同じ末路を辿って地面に崩れた落ちた。
(エンジェルなんかじゃねぇ…こいつは悪魔だ。)
目の前で起きたほんの数分の出来事が受け入れられず、呆然とケンジは目の前の光景を眺めそう思った。
「馬鹿野郎っ!ケンジ、何ボケッとしてるんだ!走れっ!」
そんなケンジにトシオからの怒号が跳び、その声にケンジは足を縺れさせながらトシオたちの元に走る、しかしその道を立ち塞さがる影。
「うーん、見逃してあげてもいいんだけど、変な噂流されるとボクこまっちゃうからなー。」
そう言いながらケンジを見下ろすフロウは不敵な笑みを浮かべる。
「君、死んじゃおっか♪」
笑みを浮かべ、フロウはまるでどこかに遊びにいくかのようにケンジに告げる。
「ケンちゃんっ!」
フロウの登場で一時落ち着きを取り戻したチヅルもフロウの発言を受けて再び取り乱す。
(俺は死ぬのか…こんなところで。)
目の前の全ての情景がケンジの目にはスローモーションに見えた。
『死』言う現実を直視できない故なのか、これが走馬灯と言う奴なのかケンジには理解が出ない。
そんなときケンジの頭に何処からともなく声が聞こえてくる。
(少年…『力』がほしいか?)
(『力』?)
(今回は君に少し力を貸そう。この状況を打破できるぐらいのな)
(お前は…誰だ?)
(私か?『私』は『君』だよ。今回は大丈夫だがもし本気で私の『力』を手にしたいのなら『覚悟』を決める事だ。『力』を手にするのは君が『化物』『怪物』と思った人間と『同類』になる事なのだから…)
その言葉が途切れるのと同時にケンジの周りに謎のエネルギーがあるまり出す。
「な、何これ。ボクこんな展開好きじゃないんですけどっ!?ってかこの子まさかアポカリプスウイルスの『キャリア』っ!?」
ケンジの周りに集まっていたエネルギーは風船のように一気に膨らむと爆ぜた。
その爆ぜた時の勢いでケンジの体はフロウの脇を抜けトシオとチヅルの元へ転がった。
「ケンちゃんっ!ケンちゃんっ!」
意識を失っているケンジの体を揺するチヅル。
そんなチヅルを横目にケンジの生存を確認するトシオ。
「大丈夫だ、チヅルちゃん。ケンジは気を失ってるだけだ。俺がケンジを背負って走る。チヅルちゃんも走れるね?」
ここから気絶してるケンジを連れて逃げなければ行けない事をチヅルに告げる。
チヅルはその言葉に同意するように頷くと、ケンジを背負いやすいようにトシオをフォローする。
「だーかーらー。逃がさないって言って…っ!?」
逃げようとする三人にフロウが近づこうとしたその時、横から謎の影に襲撃を受け露店へと吹き飛ばされるフロウ。
その光景を見たトシオは今が好機と言わんばかりにケンジを背負って走れる最大のスピードでその場から離れ、チヅルもトシオに続いて駆け出していった。
「いったいなー。誰だよ、ボクを吹き飛ばす命知らずわっ!」
露店が崩れた際に立ち上がった砂埃は次第に晴れる。
そこに現れたのは赤い髪の毛をポニーテールをした少女。
「あたし、参上♪」
その場で意気揚々と伸びをするユナであった。
「ふふ。思ったよりも早くあえて嬉しいよ『九龍』。彼らは逃げられたけど結果オーライってとこかな。ボクの運もなかなかだね。」
「だからって、あたしに惚れんなよ♪」
「誰が、まぁいいや、君を捕まえて尋問しないと、君達の首魁『レオ』の居場所をね…」
ロングコートについた埃を払い立ち上がると、フロウは目の前にいるユナを睨み付ける。
「あたし、戦いたくて、うずうずしてたんだー♪レオの居場所を知りたいなら力づくで吐かせてみれば?絶対に吐くつもりはないけど♪」
「カッチーン。その発言、後悔させてあげるよ。」
「あたしの強さに泣いても知らないよ〜。最初っからクライマックスでいくぜぃ♪」
『天使』を名乗る悪魔の少女と『龍』の少女がここに激突した