――考えたことはあるだろうか――
――今居る世界以外にも違う世界があって――
――その全てが違う時をまったく並行に進んでいて――
――もし、他の世界に行くことが出来て――
――もし、その世界を自由に変えることが出来る――
――そんな力があったら・・・――
第1話 始まりと出会った日
世界はそのありようを隠すことは出来ない。どんなに不可思議なことでも。それがこの世界の法則ならばそれが本物なのだ。
そのものの心を反映し、反映したものを力と変える。そんな力を持った特別な物がこの世界には存在する。
それは世界の力の源と呼ばれるもの・・・『
見た目は妙に光るただの石の塊だが、その石を加工し持つ者の意思を込めることでその力を発揮する。その力は千差万別。
石自体が持つ力を反映する時もあれば持ち主の意思の力を反映することもある。そんな不思議な石。
そんな不思議な石が存在するこの世界は・・・とても平和だ。国と国との争いも無く。互いに互いを助け合い、分ち合う。
そんな夢物語のような素晴らしい世界がこの世界だ――だが、なぜそれを素晴らしいと思えるのか?当たり前のことなのになぜ素晴らしいと思えるのかわからない――
そんな摩訶不思議でそれでも当たり前な世界に俺は居る。俺はマテリアルを探して世界を旅する冒険者。
やることはマテリアルがあるとされている遺跡群を探索するのが主な方法だ。
時折マテリアルから生まれたという魔物という生き物や遺跡を守る守護者などとも遭遇し一騒動起こさなくてはならないときもある。だが、それはそれで俺の生活の一部なのだ。
そんな危険な時、俺の助けになるのは相棒の銃一丁。弾丸の代わりにマテリアルを装填することで鉄の弾ではなく。炎の玉を撃ち出すことが出来る。
見た目は少々危険だが、使い方次第ではかなり便利なものだ。そうして、俺は毎日を過ごしている。決して一つに留まらずあらゆる場所を旅する。
――だが・・・・
なぜだろう?なぜ俺は旅をするのだろう?そもそも俺はどういう経緯で俺は冒険をしているのか・・・。正直なところなぜか曖昧なのだ。
自分がどうして旅を始めたのか自分がどうして旅がしたいのか・・・はっきりしない。
気がつけば俺は冒険者となって世界中を旅していた・・・本当にそんな感じだ。
でも、それを深く追求しようとは思わない。自分がやりたいことをどうしてそんな風に考える必要があるのだろうか?
解らない。時々当たり前のことがどうしようもなく嘘のように感じることがある・・・。なぜだろう?
たぶんそれは・・・きっと俺の持つ左目のせいだろう・・・。
時折俺の左目が見せるものせいで疑問に思う。不安に思う。心のどこかの何かが自分に叫んでいるかのようだ。
でも、そんな話を誰かにするつもりは無い。する必要も無い。だから、俺は何の疑問も無くこれまでを生きていた。そしてこれからも生きていくだろう。
――あの人に出会うまではそうだっただろう。
俺があの人と会ったのは本当についこの間の事だ。記憶が定かではないが、俺が冒険者としては駆け出しであるのは自分が一番知っている。
だから当然ミスもするし失敗もする。その結果は酷い物だった。
その日、俺はマテリアルがあると言う遺跡に潜り込み見事マテリアルを見つけた。その時辺りへの警戒を怠って見事遺跡にあった罠に引っかかってしまった。
落とし穴――とても古典的ではあるがその罠に掛かった自分は・・・。
だがそんなことで悲観している場合ではなかった。落とし穴の先――遺跡の最深部へと落とされた。
「・・・くそ!数・・・多すぎるだろ。」
最深部には多種多様の魔物がこれでもかとそこに居た。視認のみでも軽く20は確認できる。脱出するには最低でもその倍の数を倒さなくてはならないだろう。
探索はまだ素人であることは認めるが、戦闘はかなり自信があるもののその数を相手にするのは少々酷である。
何より足元には地下水が流れている。それに伴って水に属する魔物も多い。俺の愛銃――フレアカノンは火を放つ銃。倒せなくは無いが最悪でも威力を倍以上に上げて放出しなくてはいけない。
火でも水には勝てる。だが、勝つには圧倒差でなくてはいけない。何よりそんな火力を延々と出していたら俺の
俺の場合は実弾を持ち歩くよりも数が撃てるだけのマナを持っているが結局はそれまでそれ以上は使えない。一撃で仕留めるだけの威力を出したらすぐに空になる。
ここを無事に脱出する為には無駄は一向に出来ない・・・だが
「考えてる暇・・・なさそうだな。」
敵は俺の存在に気づいてか・・・というか確実に気づいただろう。視界に居る奴は全員俺の方を向いてる。さらに一部はもはやいつ飛び掛ってきてもおかしくない。
「こうなりゃ自棄だ・・・!全部まとめて相手になってやる!!!」
諦めも覚悟も同意義だった俺にとって本当に自棄だった。そして俺は魔物ども全員を相手にした。
どれほどの数を相手にしただろう・・・どれほどの数を倒しただろう・・・。もう覚えている、いない以前の問題となってしまった。
結局時間にして1時間ちょっと――大量放出をしたにしては持ったほうだ――結局マナの使いすぎで体力もおまけに足場のせいでどんどん奪われた。
そしてそのままその場に倒れこんでしまった。意識もすこしずつ薄れ始めた。魔物たちも理由は定かではないが襲うのを止めた。その理由が自分以外にあることを俺はまだ知らなかった。
その時その人に助けられたのだ。そして、それがあの人との出会いだった。
俺が『この世界で始めて師と会った』日だった。